『100万回 言えばよかった』残酷なほどにまっすぐな悠依らの思い 先が見えない事件の真相

 本作のキーワードになっている幽霊たちの「思い残し」。だが、思い残しがあるのは何も死んだ人ばかりではないと、夏英(シム・ウンギョン)は言う。夏英の夫を交通事故で巻き込み、死んでしまった弥生(菊地凛子)の謝罪を、どうしても許すことができない夏英。それも、また一つの生きる理由になっているようにも見えた。許さないことで、言えなかった想いを抱き続ける。癒やされない道を選ぶことで、その愛を日々刻みつけているのかもしれない。もちろん弥生にとっては「許されたい」と願って幽霊になってでも現世にとどまっているのだから残酷な展開だっただろう。でも、それくらい人の気持ちは思い通りにはいかないし、どうしようもないものだからこそ尊いのかもしれない。

 直木が巻き込まれた事件の黒幕は、莉桜(香里奈)をはじめ、少女たちを犯罪の道へと引き込んでいるちーちゃんなのは間違いない。だが、まだ見えてこないのは彼女の指示で動く人がどれくらいいるのかという点だ。涼香(近藤千尋)を襲ったのは希成(永島敬三)ということは予想がつくものの、今回、悠依を襲ったのも希成なのではないかと思ったが、覆面を剥ぎ取ったところ見知らぬ男の顔だったからだ。同時に、希成がこれほどちーちゃんの言うことを聞いているという背景も気になるところ。

 それは、かねてから怪しいと話題になっていた英介(荒川良々)が語った過去に通じるのだろうか。「昔はかなりワルだった」という英介。悪いことをする大人が周囲にたくさんいて、そうした大人たちと一度関わるとなかなか縁が切れないのだそう。

 そんな英介が悠依たちの里親である勝(春風亭昇太)のおかげで、今は子どもたちをサポートする事業を展開している。だが、果たして本当に足を洗えているのだろうか。グミをむしゃむしゃと食べるその姿が、20年前に莉桜たちを載せた車を運転していた「グーミー」と呼ばれる男を彷彿とさせるものだった。やはりグーミーは英介だったのだろうか。そして、英介を救ってくれた勝はもういない。そうなれば、また悪い大人たちの毒手が英介に伸びても不思議ではない。あんなにちーちゃんとの関係を断ち切りたいと願っていた莉桜が自ら車に乗り込んでしまったように。

 進むほどに闇深く、まだまだその先が見えない事件の真相。そして、悠依の幸せを願うからこそ成仏したい直木、直木にはずっと成仏してほしくない悠依、死をも恐れずに直木を通じて悠依と一緒にいたい譲……と、それぞれの残酷なほどにまっすぐな思い。果たして、彼らの未来はどのような結末にたどり着くのだろうか。できれば、流すならば幸せな涙を、そして爽やかな笑いに包まれた展開を期待したいものだ。

■放送情報
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:井上真央、佐藤健、シム・ウンギョン、板倉俊之(インパルス)、少路勇介、穂志もえか、近藤千尋、桜一花、香里奈、平岩紙、春風亭昇太、神野三鈴、菊地凛子、荒川良々、松山ケンイチ
脚本:安達奈緒子
プロデューサー:磯山晶、杉田彩佳
演出:金子文紀、山室大輔、古林淳太郎
編成:中西真央、吉藤芽衣
主題歌:マカロニえんぴつ「リンジュー・ラヴ」(TOY’S FACTORY)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/100ie_tbs/
公式Twitter:@hyakumankai_tbs
公式Instagram:hyakumankai_tbs

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