リューベン・オストルンド監督が“風刺”を語る 『逆転のトライアングル』インタビュー映像

 2月23日に公開される映画『逆転のトライアングル』の監督を務めたリューベン・オストルンドのインタビュー映像が公開された。

 『フレンチアルプスで起きたこと』で第67回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で第70回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、本作でカンヌ史上3人目の2作品連続パルムドール受賞という快挙を成し遂げたオストルンド監督。本作では、「ファッション業界とルッキズム、そして現代階級社会」をテーマに据えた。

映画『逆転のトライアングル』特別映像:リューベン・オストルンド カンヌインタビュー【2月23日(木・祝)全国ロードショー】

 公開されたインタビュー映像では、これまでの作品でも社会や人間の行動を独自の視点で観察し、遊び心溢れる表現で“疑問”や“批判”を描いてきた監督の思考の原点が明らかとなる。

 ファッション業界が舞台となる本作の主役、ハリス・ディキンソンとチャールビ・ディーンが演じるモデルの2人について、「彼らの美貌は、いわば通貨だ。豪華客船に乗れたのも、結局のところ、ルックスがよかったからだしね」と生きていくうえで容姿が最大の武器にもなり得ることを認めつつ、「デジタル世界では、“見た目がすべて”という傾向が強い。その人の考えよりも外見の方が重視されてるんだ」と現実世界の問題を提起した。

 舞台に無人島を選んだことについては「ファッション業界も豪華客船も“階級社会”だ。だが無人島に着いた途端、その秩序が崩れ生存競争が始まる。そこである人物を登場させようと考えていたんだ」と語る。豪華客船での撮影については、かつてオナシス家が所有しており、60〜70年代にかけて西洋の超エリートたちが集う場所であった実在の豪華客船「クリスティーナ・O」で行われたことを明かし、「チャーチル元首相やケネディ元大統領、マリリン・モンローやマリア・カラスなどの本物のセレブや権力者が乗る客船だったんだ。象徴的な意味を込めて劇中で船を爆破させたんだよ」と満足そうに語った。

 またオストルンド監督作を深く読み解くうえで重要な“風刺”での伝達手段について話が及ぶと、「ミヒャエル・ハネケが言ってたんだ、『もうドラマは作れない。この世が茶番だからだ』とね。ある意味、彼は正しいと思う」と語る。さらにアダム・マッケイ監督の『ドント・ルック・アップ』を賞賛しつつ、アメリカ映画とヨーロッパ映画の違いも語る。「ヨーロッパではアート映画が好まれがちだけど、どの作品もテーマが決まりきってる。僕は“社会派映画”と“ジャンル映画”をミックスしたかった。ヨーロッパが今まで生み出してきたのは、知的好奇心を満たす作品。今回はヨーロッパの手法とアメリカの手法を組み合わせた。アメリカ映画は観客との距離が近いからね」と解説し、観客に身近に感じてもらえる風刺映画を目指したと話した。

 そして今回の映画には世界中のセレブに対する挑発も感じられるが、監督は「世界を見渡せば、僕自身だって金持ちの特権階級だ」と自分自身を客観的に捉えており、「僕自身に疑問を呈し同様させたかったし、ジレンマを抱かせたかったんだ。金持ちだけでなく、すべての人を揺さぶりたいよ」と笑った。

リューベン・オストルンド監督

■公開情報
『逆転のトライアングル』
2月23日(木・祝)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
監督:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソンほか
配給:ギャガ
Fredrik Wenzel © Plattform Produktion
公式Twitter:@triangle0223
公式Instagram:@triangle0223

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