『舞いあがれ!』舞と貴司の“言葉にしない”もどかしさ 史子との理解の壁が顕在化する

 幼なじみとの恋愛を描いた物語はこの世にたくさん存在している。そこには幼なじみという壁を越えたくても越えられないもどかしさがつきもので、それこそが人々の心を捉えてきたのだろう。大抵の場合、主人公が告白して関係を変化させる勇気を手に入れるのが物語の到達点(=ゴール)となる。

 『舞いあがれ!』(NHK総合)の舞(福原遥)も幼なじみである貴司(赤楚衛二)に本当の思いを伝えられないでいるヒロインの一人だ。理由はもちろん、今の関係を壊したくないから。舞は貴司にとって、何でも話せる幼なじみのままでいたいと願っている。

 そんな中、貴司の短歌に魅せられた女性・史子(八木莉可子)が現れた。いくら自分が変わらぬ関係を望んでいても、相手の思い、もしくは第三者の介入で否応なしに関係が変化していくこともある。第20週初日の放送は舞がそのことを実感する回となった。

 舞は仕事や家族のことで何かあった日はいつもデラシネに向かう。“その日”も、舞は貴司に話したいことがあった。それは、新聞記者・御園(山口紗弥加)との出会い。毎報新聞社の大阪支社に東京から転勤してきたばかりの御園はうめづで昼食中、たまたま聞こえてきた舞とめぐみ(永作博美)の話に興味を持ち、IWAKURAを取材することになる。

 山口紗弥加が朝ドラに出演するのは今回が3回目。直近では、2021年度前期の『おかえりモネ』に出演し、東京で気象予報士としてのキャリアを積み、地元・気仙沼に帰ってきた百音(清原果耶)が出会う居酒屋経営者の女性・美佳子を演じた。奇しくも美佳子が登場したのも今回と同じく第20週だ。

 当時、地元のために働きたいと思ってはいるものの、周りからなかなか理解が得られずにいた百音。とりあえず、第一歩としてコミュニティFMで気象情報を流し始めた時に出会った美佳子は災害FMでボランティアを務めたこともあって、百音を心から応援してくれた。山口の持つ、見ているだけで気持ちがいい快活な雰囲気はヒロインの憂鬱を吹き飛ばしてくれる。

 今回演じる御園もそう。御園はどうやらものづくりの街・東大阪で働く女性に興味があるようで、取材でもネイルより油で汚れた指先の方がカッコいいと言ってのける景子(二宮星)をはじめ、IWAKURAの女性従業員にフォーカスを当てる。そこには彼女なりの信念と使命があるのだろう。めぐみが感心するほどのパワフルさは史子の登場で少なからず心に陰りが見える舞を元気づけてくれた。

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