『舞いあがれ!』“邪魔者扱い”の舞の辛さ ツバキのような恋と告白のテーマが交差する

 舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)は、秋月史子(八木莉可子)、リュー北條(川島潤哉)の登場によって、自身の本当の気持ちと必死に向き合うこととなった。『舞いあがれ!』(NHK総合)第91話で、舞は久留美(山下美月)に「貴司くんにとって、何でも話せる幼なじみのままでおりたいねん」と明かすが、それは逆説的に貴司への思いに気づきながらも、自身の気持ちに蓋をして抑え込んでいることを示していた。

 舞は夢が違え、別れることを選んだ柏木(目黒蓮)と4年以上連絡すら取っていないことを水島(佐野弘樹)と吉田(醍醐虎汰朗)との会話の中で話していた。そこから舞の中にゆっくりと植え付けられていたのが、別れてからはもう元の関係には戻れないということ。もしあの時、付き合っていなかったのなら、柏木ともデラシネで笑い合っていた未来があったのかもしれない。それならば、貴司ともこのまま今の友達としての関係を壊すことなく、デラシネで笑い合っていたい――。そう思っていた。

 そんな2人の居場所であるデラシネに緩やかに入り込んできた史子。「自分の中の本当の気持ちに向き合ってみてよ」と貴司にこれまでにない濃厚な歌を求める北條へ、史子は会話に割り込んでまでも意見する。貴司の短歌は淡いところが素晴らしい、自分が「梅津先生の一番のファン」だと。舞は、一太(若林元太)やさくら(長濱ねる)が大阪で開く物産展に一緒に行く予定だった貴司をデラシネへと迎えに来るが、貴司は歌集に入れる10首を翌日までに作らなければならず、到底それどころではない。

 2人の居場所だったはずのちゃぶ台に座っているのは史子。店内から奥の部屋に上がっていけない舞は、いつの間にか短歌のことは分からない、分かってあげられない邪魔者のような扱いになってしまっている。奥の部屋からきつい目線で見つめる史子、それに舞は気づくもすぐに視線をそらしてしまう。しんどそうな貴司を見るのがつらいというのもあるだろうが、そんな貴司になにもできない自分自身が舞はつらかったはずだ。「話の合う仲間ができてほんまによかった」「関係ない」と諦めに似た思いを抱いてしまうのは、友達の関係から一歩踏み出せない、ある種の恐れでもある。

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