『6秒間の軌跡』高橋一生×橋爪功の楽しく切ない会話劇 “タイトル回収”回のはかなさ

 さて、成功するとは思えなかった片山からの依頼だったが、神谷も彼と似たタイプの人間で告白は上手くいった。それもこれも、ひかりが「私たちの仕事は片山さんの望む花火を作って打ち上げること」だと星太郎を説得したおかげである。

 その夜、星太郎は2019年の夏の日のことを思い返していた。花火大会が終わり、星太郎と航は数人の花火師たちと気持ちよく酒を酌み交わしていたが、その一人から男二人暮らしを続けていることに対して苦言を呈され大げんかとなる。「また捨てられんのが怖いのかよ」という無神経な一言が二人の神経を逆撫でしたのではない。自分たちの“暗黙のルール”を壊された気がしたからだ。

 そのルールとは、出て行った母親の話を会話に出さないこと。色々とお互いに思うことはあれど、星太郎と航はくだらない話でそれをかき消してきたのだ。そんな悲しい始まりではあったが、30年経った今振り返れば星太郎も航も「楽しかった」と思える日々に変わっていった。

 生前の航とのやりとりを思い出しながら、泣いているように笑う星太郎の姿が切ない。儚くも美しい花火が人々の心にいつまでも余波をもたらすように、航の存在が今も星太郎を支えている。新聞は捨てることができたものの、芋けんぴにかりんとうと航が好きだったものに囲まれて生きる星太郎。それらに亡き父の面影を求めているのだとしたら、“幽霊”として見えている航も……?という思いが一瞬頭をよぎる。そして、最近のコンビニスイーツを星太郎に買ってきたひかりは案外、“そのこと”を敏感に感じ取っているのかもしれない。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30〜0:00放送
出演:高橋一生、橋爪功、本田翼
脚本:橋部敦子
監督:藤田明二(テレビ朝日)、竹園元(テレビ朝日)、松尾崇(KADOKAWA)
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:KADOKAWA
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/6byoukannokiseki/
公式Twitter:@6secEx

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