『アイカツ! 10th STORY』“異例のネタバレ禁止期間”が設けられた物語構成の必然性

『アイカツ!』ネタバレ禁止期間の必然性

 2023年1月20日より公開中の映画『アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~』(以下、『未来へのSTARWAY』)は、“異例づくし”のシリーズ続編だった。そして“異例づくし”だったからこそ、これまで『アイカツ!』に触れてきた多くのファンが最大級の称賛を持って受け入れる、傑作となっていた。

 今回の物語のメインキャラクターは、『アイカツ!』の初代主人公である“星宮いちご”、それから彼女の親友である“霧矢あおい”と“紫吹蘭”の3人だ。作中で3人はアイドルユニット“ソレイユ”としても活動している。

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 映画の序盤、3分の1を占める部分は、2022年夏に公開された『劇場版アイカツプラネット!』と同時上映された短編と同一の内容で、そこから先が“新作パート”となっている。既存パートの部分では、アイドル養成校である“スターライト学園”の卒業を控えたいちごたち3人が、卒業にあわせてソレイユとしての活動を休止し、別々の道へと進むこと、その前に卒業記念ライブを開催しようとしていることなどが描かれた。

 多くのファンが、新作パートではこの卒業記念ライブまでの出来事が描かれるものと考えていた。そんな中、映画公開前日になって公式Twitterから公開後1週間の“ネタバレ投稿禁止のお願い”が出されたのだ。

 SNSなどでのネタバレに“解禁日”を設けた上で、それまでの期間の“ネタバレ自粛”を公式から観客へお願いするというのは、ここ数年で広まりつつある手法だ。

 『ONE PIECE FILM RED』もこれを行ったし、もう少し遡ると『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開時、ファンがあまりにネタバレ投稿を自粛したために公式から「これまで初見の方へ配慮して下さった皆様、ありがとうございました。今後はぜひ、皆様からのご感想を聞かせてください!」という“ネタバレ解禁令”と取れる投稿が行われたことが印象に残っている人は多いだろう。

 こうした公式からのお願いは「なるべく多くのファンに作品を新鮮な状態で楽しんでもらいたい」という意図と、「とはいえずっとネタバレを自粛されていては作品が話題に上らず、より多くの観客に届かないまま上映が終了してしまうかもしれない」というデメリットを天秤にかけた上での折衷案と思われる。“ネタバレ容認派”の観客と“ネタバレ厳禁派”の観客の間の軋轢を軽減する意味でも、このような公式によるネタバレのコントロールは、SNSが普及した時代における現状考えられる最適解と言えるかもしれない。

 それでも、この手法を『アイカツ!』が取ったことは、ファンの中にも意外に感じる者が多かったと思われる。これまでの『アイカツ!』シリーズから考えれば、ネタバレを強く警戒するようなストーリーになるとはあまり想像できなかったからだ。その上で、すでに本作を鑑賞した人ならば、“ネタバレ禁止”の施策が取られたことに、深く納得できているだろう。

 前置きが長くなったが、本稿では『未来へのSTARWAY』の“ネタバレ禁止令”を必要としたストーリー上のギミックと、この仕掛けがいかに本作のテーマにおいて必然であったかについて書いていこうと思う。

 なお、本稿は『未来へのSTARWAY』の“ネタバレ禁止期間”が明けたあとに公開している。それは、このレビューが本作の核心に迫るネタバレを多分に含んでいるからだ。もし、これから『未来へのSTARWAY』をネタバレされない状態で鑑賞したい人がこれを読んでいるのなら、このページはいったんブックマークして、いますぐ映画館へと向かってほしい。

『アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~』本予告

※次ページよりネタバレあり

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