『カジノ』視聴者を釘付けにするチェ・ミンシクの演技力 “危険”なホ・ソンテにも注目

「つわものばかりだぞ」
「僕だってつわものです」

 百戦錬磨を彷彿とさせる怪しい男たちがしのぎを削る姿。ディズニープラスで配信中の『カジノ』は、伝説のカジノ王の生き様を描いた物語だ。韓国が誇る俳優チェ・ミンシクをはじめ、演技派俳優たちがカジノを舞台に、欲望むき出しの強烈なぶつかり合いを展開していく。

 第1話から第3話までは、チェ・ミンシク演じる主人公チャ・ムシクの幼少期の物語が中心に描かれた。監督であるカン・ユンソンは、インタビューで「チャ・ムシクが、どのように生きてきた人物なのか説明されなければ、その後の彼の行動を理解できない。主人公のバックグラウンドが入ってこそ、彼がどんな種類の人間なのか、なぜギャンブルをすることになったのか、フィリピンまで行った理由が何なのか納得できる」と語っている。(※)その言葉の通り、ムシクの劣悪な生育環境から、彼がギャンブルで身を持ち崩すさま、そこからカジノビジネスに手を染めるさまを描いたことによって、視聴者を主人公ムシクへ感情移入させることに成功したのではないだろうか。

 第4話では、学生運動に巻き込まれたムシクが、警察から逃げるために入隊しようとするところから物語は始まる。ムシクは海兵隊に入隊を希望するが、前科があり認められない。諦めて帰ろうとするムシクは、キム係長(チョ・ハンチョル)から北派工作員にスカウトされる。過去と現在が交錯しながら、ムシクがカジノビジネスに手を染めるようになるまでと、成功から転落、そして再起までを描いていく。

 ムシクは、ミン・ソクチュン(キム・ホンパ)から借金回収の腕を見込まれ、カジノのジャンケットルームの経営を任されることになる。ここで『イカゲーム』の鮮烈な演技が記憶に新しいホ・ソンテ演じるソ・テソクが登場し、ムシクと対面することに。ムシクのもとにテソクの面倒を見るように後輩から電話が入る中、当の本人がその電話を聞いている。さすがホ・ソンテ、登場シーンから貫禄を放ち、ふてぶてしい面構えでムシクを睨みつける。ムシクもテソクもお互いが何者かわからず、牽制しつつ相手を値踏みするかのような時間。そこから勝負が決まり、勝者と敗者が決まる瞬間までのふたりの対峙シーンは、大物俳優同士の演技に見惚れて惹きつけられる。テソクはロシアンルーレットで自分の命さえも賭ける常人ではない危険な姿を見せる。このシーンのホ・ソンテの演技は注目に値する。彼が何をするのか、ハラハラし、スリルを楽しんでいるのだと気づかされ、テソクというキャラクターが尋常ではないことがわかる。テソクの今後を表すフラグのようにもとれる緊迫したシーンだ。ジャンケットルームの経営で大金を稼ぎだしたムシクは闇を深めていき、キングメーカーを通じて政財界への人脈も作り出す。

 カン・ユンソン監督は、主人公が必ずしも正義である必要はなく、ムシクも単なる悪役ではないとインタビューで答えている。(※)“欲”という名のスープを飲み、“悪意”という名のステーキを貪るような男たち。今にも飛びかかってきそうな血の気の多い男たちを、ムシクはうまく飼いならすかのように、駒にしてゆく。時に力でねじ伏せ、時に大金を渡し、ムシクは力を蓄えて上り詰めていく。第5話からは、いよいよソン・ソックの登場だ。ノワールの真骨頂とでもいうべく、泥水を舐めてきたようなキャラクターだらけの中で、ソン・ソックはどんな姿でムシクと対峙するのだろうか。待ち遠しいところだ。

参考

※ http://m.cine21.com/news/view/?mag_id=101748

■配信情報
『カジノ』(シーズン1全8話、シーズン2全8話)
ディズニープラス スターにて独占配信中
演出:カン・ユンソン
脚本:カン・ユンソン
出演者:チェ・ミンシク、ソン・ソック、イ・ドンフィ、ホ・ソンテ
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