『非常宣言』にみる現代の“リアル” イム・シワンの“いかにも”な悪役にも注目

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、今年こそは韓国に旅行をしたい鈴木が『非常宣言』をプッシュします。

『非常宣言』

 本作のタイトルにもなっている「非常宣言」とは、飛行機が危機に直面し、通常の飛行が困難になったとき、パイロットが不時着を要請すること。“これ”が布告された航空機には優先権が与えられ、他のどの航空機よりも先に着陸でき、いかなる命令を排除できるため、航空運行における戒厳令の布告に値する。(※1)

 本作は、韓国からハワイへ向かう「KI501」便の中で勃発したバイオテロが、韓国、そして世界を巻き込み、混乱を引き起こす特大スケールの映画だ。バイオテロの韓国映画というと、『新感染 ファイナル・エクスプレス』が頭に浮かんでくるが、本作の感染者はゾンビにはならず、じわじわと死の恐怖を味わうこととなる。巻き起こる世論や、人々の反応も、このご時世だからこそ感じられる、実に“リアルな”映画だ。

 物語は、飛行機の中と地上の、ふたつの場面で展開される。飛行機に乗り込むのは、イ・ビョンホン演じるパク・ジェヒョクと、その娘スミン(キム・ボミン)。そして地上で決死の活躍をするベテラン刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)の妻へユン(ウ・ミファ)も友人たちと乗り込んでいる。犯人役を演じるのは、イム・シワン。ひょうひょうとした態度で“いかにも”狂った悪役オーラを序盤から醸し出している。演技力はさながら、そのテロの動機にも注目だ。本当に彼のような“現代の”犯罪者がいそうで怖い。そんなリアルさを感じさせるストーリーになっている。

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