『モーニング』（講談社）で連載され人気を博した泰三子の人気マンガを実写ドラマ化した『ハコヅメ～たたかう！交番女子～』（日本テレビ系／以下『ハコヅメ』）が年末の12月29日、30日に一挙放送される。ここでは、本作で埼玉県町山警察署地域課に異動になってきた巡査部長・藤聖子を演じた戸田恵梨香の魅力を改めて振り返ってみたい。

　戸田が演じた藤は、元刑事課のエースだったが、後輩へのパワハラが原因で町山交番に左遷されてきたという噂の女性警察官。新人巡査として配属された川合麻依（永野芽郁）とペアを組むことになり、川合に警察官としてのイロハを厳しくも愛情を持って教えるという面倒見のいい“姉御”的な一面を持つ女性だ。

　一方で、休みの日には不可解な行動をとったり、異動となった理由にはおかしな部分があったりと、川合が疑心暗鬼になってしまうほど、物語のミステリアスな部分も受け持っているキャラクターだ。

　そればかりではなく、警察学校の同期で、刑事課でもタッグを組んでいた源誠二（三浦翔平）には「マウンテンメスゴリラ」と呼ばれるほど激しくやり合い、刑事課の後輩である山田武志（山田裕貴）には鋭い突っ込みを入れるなどテンポの良さもある。

　さらに2018年放送の連続ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』（TBS系）で、戸田とまさしく“大恋愛”を繰り広げたムロツヨシ演じる町山交番の所長・伊賀崎秀一とは、上司部下、友人、親子などの言葉で表現できる関係性をちょっとずらしたような微妙な二人を演じた。

　藤という女性が本作で見せる顔は非常に多彩だ。人間なんて一面的ではない……と言ってしまえばそれまでだが、とかくフィクションで描かれる人物というものは、例えば正義なら正義、悪なら悪、頼りがいがあるなら頼れる存在に、情けなければ情けない人物という一面的な方向性に振り、どこかで相反する存在に切り替わっていくことで劇的欲求を満たしていくことが多い。

　物語が進んでいけば、藤の多面的な人物像もある一つの目的のために整合性が取れているものだと分かるのだが、本作の藤は、戸田の演技力によって、どっちに振れるのかなかなか予測のつかない魅力的なキャラクターに仕上がっている。