そして第59話で貴司（赤楚衛二）が舞の背中をそっと押した言葉も印象的だった。「悩んでんねんやったら、しんどなる前に吐き出した方がええで」という声かけは、就職が延期になったことが棘のように心に刺さっていた舞にとって、本音をさらけだすきっかけとなる。ここで感動したのは、貴司が舞の悩みを「聞いてやる」とは言わなかったことだ。そっと寄り添い、さりげなく支え合い、心の重荷を軽くするよう導く。『舞いあがれ！』が初週から描いてきた真髄を五島の地で見たことに胸が熱くなる。

　物事をあるがままに受け止める桑原脚本には、SNSでも「押し付けがましくない、優しい距離の取り方が桑原脚本の良さ」「視聴者が気になるシーンはその後を必ず描いてくれる」など賞賛の声があがっていた。

　美しい言葉で紡がれる世界の余韻に浸る間もなく、予告編では舞の実家に大変なことが起きそうな気配がひしひしと伝わってくる……。舞や家族は、無事に危機を乗り越えることができるのだろうか。引き続き舞の活躍を見届けたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作：桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽：富貴晴美
主題歌：back number 「アイラブユー」
制作統括：熊野律時、管原浩
プロデューサー：上杉忠嗣
演出：田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地：東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供＝NHK