戦争ではなく金融危機を扱う『舞いあがれ!』の新しさ 舞たちは“一陽来復”となるか

 現代を舞台にした朝ドラに金融危機というひとつ刺激的な題材を得て、またひとつ朝ドラが前進したのではないだろうか。飛行機を飛ばすシーンを撮影することも含め、これまでにない朝ドラに挑んでいるように感じる。そうはいっても戦争や震災と同じく苦しいことがあっても立ち上がっていく希望を描くことは変わっていない。

 『舞いあがれ!』のキャッチコピーは「向かい風を受けてこそ空高く飛べる」で、それは五島の名物・ばらもん凧から想を得たものだという。向かい風を受けないとあがらない凧のように、逆境やつらいことも受け止めて、ポジティブに前に進んでいく力に変えていくことを主人公は託されている。

 第12週では、五島にお試し移住に来た少年・朝陽(又野暁仁)が南天の実を星に見立てて天体図を作っていた(朝陽の靴下が星柄で星が好きなのがわかる)。南天は「難を転じる」意味をもつ縁起物の植物である。朝陽が南天の実で星座を作っていたことがわかった第59話の放送日12月22日は冬至。1年で一番日が短い日であった。ここからまた昼が長くなり、それを「一陽来復」――運が上向いていくと古来から考えられてきた。第60話で舞と朝陽の会話のなかに出てくる北極星は暗闇で迷ったときの目印になる星。ドラマでは舞も家族にも辛いことが降り掛かってきているが、きっと上向いていくという思いが端々に配置されている。これから折り返し地点、きっと物語は上向いていくはずだ。

 また、貴司(赤楚衛二)が好きだという昴(すばる)は小さな星の集まり。舞が自分だけでなく、たくさんの人の思いを背負って飛ぶという信念を表すようであった。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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