『鎌倉殿の13人』大河ドラマ史に残る最終回 政子によって孤独から“解放”された義時の最期

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)最終回「報いの時」。後鳥羽上皇(尾上松也)は全国に反目する北条義時(小栗旬)の追討を命じた。政子(小池栄子)の言葉で奮起し、鎌倉は徹底抗戦を選ぶ。泰時(坂口健太郎)、平盛綱(きづき)らが先発隊として向かい、時房(瀬戸康史)らが続く。北条の覚悟に感じ入った御家人たちが加わり、軍勢は総勢19万となった。後鳥羽上皇の近臣・藤原秀康(星智也)率いる官軍は、鎌倉勢を都に入れまいと宇治川で必死に戦うも、泰時の作戦を前に敗北した。

 最終回の見どころは、なんと言っても義時の最期だ。最終回放送前からSNS上では最終回のタイトル「報いの時」に注目が集まっていた。報いとは「善行や悪業の結果として得られるもの、または身に受けるもの」である。義時は源頼朝(大泉洋)が築いた鎌倉を守り抜くため、一癖も二癖もある御家人たちの間を奔走し、段々と鎌倉のために手を汚すこともいとわなくなっていった。そんな義時に待ち受けていた最期は、悪行の結果として身に受けるものにも、救いのようにも見えるものだった

 義時は泰時や時房と積もる話をしていたときに昏倒する。のえ(菊地凛子)が勧める薬草を煎じたものをしぶしぶ飲みながら、義時は政子たちに「これを飲みだしてから具合が悪くなった気がする」とこぼす。再び倒れたとき、義時は医者(康すおん)の口から自身が毒を盛られたことを知った。「毒を盛られたというのか」とつぶやく口元に苦々しい笑みが浮かぶ。自分に殺意が向けられたことへの驚きと当然の報いであるという諦めが感じられる弱々しい笑みだった。

 のえは、初めこそ取り繕っていたものの、義時に毒を盛っていたことをあっさりと白状する。「八重(新垣結衣)は頼朝様と戦った伊東の娘。比奈(堀田真由)は北条が滅ぼした比企の出。そんな女子たちが産んだ子がどうして跡を継げるのですか」というのえの言葉を聞いて、義時はほんの少しの間、狐につままれたような表情でのえを見つめる。その後、のえの気質を見抜けなかった自分に呆れたように笑った。のえと義時の別れは、売り言葉に買い言葉でお互いを傷つけ合うものとなる。のえの方を見向きもせず「二度と私の前に現れるな。出ていけ」という義時と、悔しさに涙を滲ませながら義時への鬱憤をぶつけ続けるのえ。しかし何よりも義時の心を傷つけたのは、のえから聞かされたある事実だった。

「私に頼まれ、毒を手に入れてくださったのは、あなたの無二の友、三浦平六殿ね」

 義時の目はのえを睨み続けていたが、その心はのえに向いていない。義時を裏切ることもいとわない人物とはいえ、幼なじみであり無二の親友である三浦義村(山本耕史)が自らを殺そうとしていたことを知って、深く傷ついたに違いない。のえが去った後も義時は、自らを殺そうとしていた親友を思い浮かべているのか、目を見開いたまま言葉を失っていた。

 義時は義村を酒の席に誘う。のえが義時に飲ませていたものを勧めると、義村はそれとなく断り続けるが、義時に押し切られると毒と思しき酒を飲み、やけになって本音を曝け出す。

「お前にできたことが俺にできないわけがない」
「俺は全てにおいてお前に勝っている」
「いつかお前を超えてやる」
「これだけ聞けば満足か!」

 実際には、義時が義村に飲ませたものはただの酒で、毒など入っていなかった。そのことを打ち明けられ、「本当だ、しゃべれる」と真顔に戻ったり、これまでと同じ調子で「これから先も北条は三浦が支える」と応えたりする姿はコミカルに映るが、義村の本音がなければ、義時は親友を信頼し続けることはできなかっただろう。

関連記事