クリスマス映画はなぜ大量に作り続けられるのか? SNSの普及で変化した需要と供給

 さらに言えば、SNSが普及した社会となり現実的な考えの子どもが増えている可能性もあるだろうし、多様性の配慮も考えないといけない。つまりストレートな物語では勝負できなくなっているのが現状である。

 例えばディズニー映画の『ノエル』(2019年)では、サンタクロースは男性であるという概念を覆したものになっているし、デジタル化によってサンタクロースよりも簡単にプレゼントを届けられるといった、「プレゼントはネットで注文するもの」という子どもたちの変わりゆく価値観を描いていた。

 先日Apple TV+で配信になった『スピリテッド』では、ディケンズの『クリスマス・キャロル』の続編であり現代版といったものとなっており、人間の価値とはどこにあるのか、価値観は人それぞれ違うのだから「良い子」「悪い子」といった選別など、そもそもできないことを描いていた。

 ディズニープラスで配信中の『サンタクローズ ザ・シリーズ』(2022年)では、ノエルは黒人の少年という設定になっているほか、大人は夢を失い、子どもの夢見る心が薄れている。そんな中で子どもの夢を壊さず、概念を壊す「変革」が描かれている。

 これら作品の傾向からもわかる通り、差別化をするには、どれだけ物語にエッジを利かせるか、世相を反映させるかが重要視され、逆に他のジャンルよりもハードルが高く、ストーリーテリングが難しいものになってしまっているのだ。

 それでも、来年も再来年もクリスマス映画は作り続けられるだろう。今もどこかで、来年のクリスマス映画企画が回ってくることにビクビクしている映画人もいるのかもしれない……。

■配信情報
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』
ディズニープラスにて独占配信中
監督:ダン・メイザー
出演:エリー・ケンパー、ロブ・ディレイニー、アーチー・イェーツ、アイスリング・ボー、ケナン・トンプソン、ティム・シモンズ、ピート・ホームズ
原題:Home Sweet Home Alone
©︎2021 Disney

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