本田翼と高橋文哉の選択は? 『君の花になる』で考える、“推し”と“ファン”の関係
本作には、あす花以外にも挫折した経験のある人がたくさん登場する。自分にもアイドルを目指していた過去がある8LOOMのマネージャー・ケンジ(宮野真守)、婚約者に浮気されたあす花の姉・優里(木南晴夏)、無愛想がゆえにアーティストから怖がられてしまうことに悩むやり手マネージャーの香坂(内田有紀)、日の目を見る前に8LOOMを脱退した元メンバーの良介(池田匡志)。誰もが、「誰かの花になりたい」と願いながらも、「自分にはなれなかった」という虚無感や引け目を感じていた人たちだ。きっと同じような思いを抱えている人も多いはず。そんな彼らにとって心の支えとなるのが、8LOOMであり、私たちにとっての「推し」である。
その存在は、ぽっかりと空いた心の穴を埋めてくれる。対象が芸能人ならその人の活動を追うこと、場所ならそこを訪れること、身近な人ならその人に会うことや喋ること、動物なら触れ合うことが喜びとなるだろう。もちろん、自分の人生を蔑ろしているわけじゃない。推しが頑張っているから、次の休みには推しに会えるから。そういう理由で勉強や仕事を頑張れたりもする。そして、たとえ生きているのが辛くとも、推しに会えるまで、推しの活動を見届けるまで、1日1日を生き延びることができる。つまり、推しは自分に生きがいを与えてくれる存在なのだ。
でも、与えてもらっているばかりではない。どんな形でも、ファンの存在は推しに力を与えているということを本作は教えてくれる。あす花と8LOOMがそうであるように、誰かを応援することは、その誰かと一緒に夢や目標を追うことにほかならない。8LOOMが配信ランキングで1位を取るために、あす花は美味しいご飯を作り、部屋を綺麗にし、メンバー1人ひとりを気にかけ、日々彼らを励まし続けた。もちろん、それも8LOOMの大きな力になったことは間違いない。だけど、8LOOMを見つけてくれるファンがいなければ、彼らは活動を続けることができなかった。
推しに会いに行ったり、推しの活動を一生懸命追ったり、推しの魅力を誰かに発信したり。何らかの形で「好き」を表明することは、推しの存在を守ることに繋がる。ファンがいなければ、推しの存在は成り立たない。だから、推しを応援する活動=推し活は自分自身の存在を肯定することにもなる。推しとファンは、お互いに「花丸を与え合う関係」なのだ。
でも、それ以上の関係を求めた途端にさまざまな問題が生じるもの。実際にあす花と弾は「花丸を与え合っているだけ」と自分たちの関係を肯定しながらも、次第に周りが見えなくなり、ついにはツーショットを撮られてしまう。推しと恋愛関係に発展することは現実でそうそう起きることではないが、例えば推しのプライベートに踏み込んだり、SNSで暴力的に不満をぶつけたり、そういう行き過ぎた行為は推しを守るどころか、失ってしまうことにも繋がることは私たちも念頭に置いておきたい。
また、あす花と弾に関しては、2人だけの問題ではない。自分たちの軽率な行動が、8LOOM全体の活動に影響を及ぼしてしまう。果たして2人は最終的にどのような選択を取るのか。フィクションとはいえ、気になるところだ。
■放送情報
火曜ドラマ『君の花になる』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:本田翼、高橋文哉、宮世琉弥、綱啓永、八村倫太郎、森愁斗、NOA、山下幸輝、志田彩良、菊田竜大(ハナコ)、川津明日香、木南晴夏、宮野真守、内田有紀、竹中直人、夏木マリ
脚本:吉田恵里香
プロデューサー:黎景怡、宮﨑真佐子
演出:坪井敏雄、加藤尚樹、宮崎陽平
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kiminohananinaru_tbs/
公式Twitter:@kimihana_tbs
公式Instagram:kimihana_tbs
公式TikTok:@kimihana_tbs