醍醐虎汰朗が『舞いあがれ!』で体現する“優しさ” 『天気の子』から再び訪れた大飛躍

 放送中の『舞いあがれ!』(NHK総合)にて、早くも初の朝ドラ出演を果たした醍醐虎汰朗。“早くも”と記したのは、決してキャリアが長いとはいえない、彼がまだ20代前半の若手俳優だからだ。これまでは知る人ぞ知る存在であったが、この『舞いあがれ!』をきっかけにさらなる大飛躍を遂げるのでないだろうか。

 醍醐に関する表現として、“知る人ぞ知る存在”という記述と、“さらなる大飛躍”という記述が矛盾しているように筆者自身も思うのだが、実際に彼はこのどちらもが当てはまる存在だ。つまり、まだ知らない人は多いかもしれないが、デビュー以降の大飛躍はすでに果たしているということである。そもそもデビューからほどなくして、人気舞台『弱虫ペダル』で主人公の小野田坂道役に抜擢され、その後も同じく人気少年漫画を原作とした舞台『ハイキュー!!』での主役への抜擢が続いている。舞台にかぎっていえば、今年の話題作の一つである『千と千尋の神隠し』であの大人気キャラクターであるハクを演じるなど、名実ともに認められている存在なのだ。ここで、映画やテレビドラマなどの映像領域へとフォーカスをズラしてみたい。そこで見えてくるのは、醍醐が若手の大注目株だという事実である。

 『弱虫ペダル』で主演を務めた後に『ハイキュー!!』で主演を務めたことは、もうそれだけで“飛躍”と呼べるものかもしれない。しかし本当の“大飛躍”は、やはり『天気の子』(2019年)で主人公の少年・森嶋帆高役の声優に抜擢されたことだろう。新海誠という人気アニメーション作家の作品で主演を務めて大ヒットに貢献したこともそうだが、身体による表現を禁じられた声優の仕事で認められたところにこそ、醍醐の“大飛躍のポイント”があるように思う。『天気の子』の公開以降は映像領域(とりわけ映画フィールド)での活躍が顕著だが、自身の演じるキャラクターを限られた条件の中でも実に豊かに表現してみせるのが、醍醐虎汰朗という俳優である。

 醍醐が『舞いあがれ!』で演じる吉田大誠は、彼が姿を見せた「航空学校編」において、メリハリのある分かりやすいキャラクターではない。誰よりもフラットな性格の人物だ。ほかの俳優陣よりも、表現の幅が限られているといえるのではないだろうか。公式サイトの人物紹介欄には「母一人子一人の苦学生で、奨学金で学校に通う。無理を言って航空学校に入学させてくれた母を気遣っていて、自分が操縦する飛行機に母を乗せるのが夢。ひかえめで優しい性格だが、成績は極めて優秀」と記されている。そしてこのように記されていることを、醍醐はすべて体現してみせているように思う。

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