『舞いあがれ!』試験結果に流れる涙 舞が合格できた理由と、柏木と水島の関係性を考える

 柏木と水島には、“ダディーイシュー”を抱えたキャラクターという共通点があった。柏木は、子供の頃あまり家にいなかったが、海外の土産話をしてくれる父に憧れを持ち、彼と同じパイロットの道を選ぶ。一方、水島は大手チェーンを営む父の跡取りにはなりたくなくて、半ば反抗するかのように彼と違う道――、パイロットを選んだ。しかし、二人とも常に感じるのは父親からの期待と重圧、そして焦燥感である。水島の父親がパイロットになる息子を認めなかった一方で、送ってきた缶詰の量が“途中で帰ってくる”ことを想定していない量だったという事実に泣けてしまう。水島も水島で、これまで何も続いてこなかった自分の目標を、初めて彼に応援されている気持ちになれていたのではないだろうか。それに気づけたのではないだろうか。だからこそ、彼の結果に……結果を聞いた彼の素振りに胸が痛む。

「親父の代わりに言ってやる、お前は絶対ダメなんかじゃない」

 その柏木の言葉に、堪えていた涙と悔しさが溢れ出てしまう水島。こういうとき、自分以上に他者が自身の気持ちを気遣ってくれると余計泣けてくるものだ。そしてこの言葉は、「父親」を強く意識することにおいてチームの中で最も似た立場で理解してあげられる柏木だからこそ、伝えてあげられた言葉である。柏木も、初期の頃と比べるとびっくりするくらいの変貌を遂げて、わんわんと泣く。舞も水島を抱きしめて泣いた。舞なら大河内の厳しさの奥にある優しさに気づけると思っていたからこそ、水島の結果に納得できず、大河内監督に話に行ったシーンに感じてしまった、驚きと違和感。

「努力してパイロットになれない学生もいる」

 その言葉を舞がもう一度考え、教官の気持ちや立場に寄り添ってくれることに期待したい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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