『親愛なる僕へ殺意をこめて』は山田涼介史上最高の演技だった “無念”を晴らした最終回に

 燃える復讐心、衝撃の事実、そして二つの人格に待ち受ける運命……。息つく暇もないほどの展開を見せ続けてきた『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ系)もついに最終話を迎えた。エイジ(山田涼介)とB一(山田涼介)に待ち受ける未来は、そして亀一(遠藤憲一)が語る殺人の動機とは。全ての人物の胸中が語られ、全ての事件の真相が明らかになった。

※本稿には『親愛なる僕へ殺意をこめて』最終回のネタバレを含みます

 亀一は拷問殺人を犯した理由を語るが、それは想像もつかないような歪んだものだった。そして亀一はこの事件の幕引きとして、息子であるB一から殺されることで痛みを得ようとしていた。LL事件の真犯人を見つけたら復讐のために殺そうと誓っていたB一も、これにはやり切れない思いを抱える。結果として亀一を殺しきれなかったB一は警察に捕まり、そのときに亀一がLL事件の犯人である証拠を提出するのであった。その後B一は法廷の場で「もう一つの殺人」、つまりエイジの人格が京花(門脇麦)によって殺された件について明らかにする。B一の中ではエイジとの人格の統合が進んでおり、エイジの頃の記憶は徐々にB一に宿り始めているという。これによりB一は、エイジと京花を取り巻く真相を知ったのだ。

 事件は淡々と解決されていく。歪んだ動機、強い苦しみゆえに狂ってしまった価値観、おおよそ共感もできないような理由で多くの人が殺されていた。そして最後に残されたのは、それぞれの人々の「感情」だ。本当はエイジに救われていた京花とナミの気持ち。空っぽだったと語る自分の人生を再生させようと残酷な方法で足掻いてきた亀一。そして一番は、苦しみから逃れるために誕生し、多くの人の利己的な欲に巻き込まれて死んでいったエイジの人格と、統合して残された新たなB一。『親愛なる僕へ殺意をこめて』は、登場人物たちが抱える複雑な心の内を役者陣の圧巻の演技で描ききり完結した。

 特に最終話冒頭から見せた山田の姿には息をのんだ。恫喝する荒々しさから、亀一を殺そうとする時のうつろな瞳とハリのない肌や表情。そして殺せなかった気持ちのぶつけどころがなく発狂する姿まで、山田は全身全霊でB一という存在を演じてきた。人間が普通に生きていたら見せることのない苦悶の表情や、動揺、恐怖、憎しみ。山田は本作を通して多くの負の感情と向き合い、咀嚼し、吐き出してきたのだ。

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