『silent』成功の秘訣は親世代? 篠原涼子、風間俊介ら純愛を見守る大人たち
8年後の現在で紬と湊斗が出会うのが、手話教室の講師・春尾(風間俊介)だ。春尾は設定では32歳と紬たちと年齢が近く、物語の展開上そのことが意味を持ってくる。健常者でありながら手話をマスターした春尾は、音のない世界とこちら側を結ぶ境界線上に立っている。春尾が身をもって経験したであろう聴覚障害者と健常者のギャップは、聴覚障害を主題の一つとする本作で、紬や想にとって何が壁になり、何ゆえに苦悩するかという物語の外延を示している。第7話のラストで春尾が奈々(夏帆)と旧知の仲であることが判明したが、湊斗や紬の良き相談相手として、また、春尾自身、過去を背負う一人としてどのように『silent』の世界に関与していくか目が離せない。
最後に紬の職場の先輩である穂田(内田慈)を挙げておこう。ブラック企業を辞めた紬が、湊斗の一言をきっかけに選んだ職場がレコード店で、そこで出会った穂田は日常的に紬と接し、仕事を通して紬のことをよく知っているはずだが、そのことが劇中で取り沙汰されることはない。近況を尋ねる何気ない会話の中で、紬と湊斗の関係や、スピッツの作品を通して紬の想に対する思いが明らかになるフックの役割を担っているのが穂田で、ゴミ出しをめぐる後輩スタッフ田畑(佐藤新)とのやり取りなどユーモラスなシーンを、あるべき場所に過不足なく収めている。言うまでもなく恋愛は日常の中にあり、こういうちょっとしたシーンを大切にするドラマは良い作品だと感じる。
『silent』の語られざる世界を下支えする大人世代のキャストたち。悩める若者に寄り添い、押しつけがましくない距離から手を差し伸べる彼らが物語の補助線を引き、潤滑油となってストーリーを導く。主役に躍り出ない彼らに注目することで、より味わい深く本作を観ることができるだろう。
■放送情報
木曜劇場『silent』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:川口春奈、目黒蓮(Snow Man)、鈴鹿央士、桜田ひより、板垣李光人、夏帆、風間俊介、篠原涼子ほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、品田俊介
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/silent/
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