『祈りのカルテ』玉森裕太が医師として大きな成長 同期の研修医たちのドラマにも動きが

 冴木(椎名桔平)に頼まれ、広瀬(原田泰造)のアパートを訪ねた良太(玉森裕太)。以前渡された1万円札を丁寧にポチ袋に収めて返しながら、「今度これでサウナに連れて行ってください」と語りかける。広瀬は良太のことを息子として見ていて、良太は広瀬が父であるとを知る由もない。一方通行の親子の食卓の光景に、哀愁たっぷりの原田泰造の表情。11月26日に放送された『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』(日本テレビ系)第8話は、冒頭シーンからずいぶんと味わい深いものがある。

 今回の舞台となるのは「皮膚科」。初期研修も終わりが近付くなか、橘(堀未央奈)と共に指導医の桃井(りょう)の元で研修を受ける良太。担当することになったのは右足に大やけどを負った守屋(山崎紘菜)という患者で、煮えたぎった油をひっくり返してしまったという。しかし橘は守屋の搬送時の服装に違和感を覚え、彼女の勤務先の近くで起きた放火事件と関係があるのではないかと疑う。そんなある夜、病室から突然いなくなってしまう守屋。橘は街で守屋を見かけるのだが、その近所でまた新たな放火事件が発生してしまうのである。

 この患者が連続放火事件と関与があるのかというミステリーを機能させるなか、疑うことなく守屋のことを信じ続ける良太。時には先輩の医師に対して“担当医”として意見するなど、今回のエピソードでは良太の医師としての成長がはっきりと見受けられた。それは特に患者との距離感のつかみ方に表れており、なにかを隠している守屋に対しては優しく問いかけるように心を開こうとし、守屋の婚約者の鍋島(岩井拳士朗)の不審な様子には単刀直入に「何か隠してます?」と秘密を引っ張り出す。患者、あるいはその周囲の人物を見て、その人に合った向き合い方をする。それは桃井が教える「医者は患者さんに信頼してもらうところからはじまる」を実践している姿でもあり、桃井が良太のことを気に入るのも納得だ。

 そして守屋と鍋島、それぞれが互いに言えずに抱えている秘密を知るだけでなく、二人の橋渡し役にもなる良太。若かりし頃に入れたタトゥーを消すために自らやけどを負った守屋に対して涙ながらに訴えかける終盤の良太の言葉は、彼の医者としての部分と人間としての部分の両面が一体になったからこそに説得力が増す。なによりも通常は平穏でのどかな皮膚科が、やけど患者が運ばれてくると修羅場になると桃井が序盤で語ることも含め、感染症の危険や最悪の場合は命を失う可能性があるやけどの怖さをしっかりと物語ってくれたように思える。

 こうした良太の成長を感じさせるエピソードのかたわらで、同期の研修医たちそれぞれのドラマにも動きが見られる。肝硬変で倒れた母親の看病のために毎夜実家に帰ってへとへとになっているみどり(池田エライザ)に、そんなみどりと言い合いになりながらも助けになろうと唐揚げをしこたま拵える裕也(矢本悠馬)。橘と谷川(YU)もなにやらいい感じになるなど、それぞれのかたちで彼ら研修医たちの結束が見えるのも、このドラマには欠かせない部分だ。

■放送情報
土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:玉森裕太、池田エライザ、矢本悠馬、濱津隆之、堀未央奈、YU、松雪泰子、椎名桔平
原作:知念実希人『祈りのカルテ』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:根本ノンジ
演出:狩山俊輔、池田千尋
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、戸倉亮爾(AX-ON)
音楽:サキタハヂメ
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/inorinokarte/
公式Twitter:@inorinokartentv
公式Instagram:@inorinokartentv

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