『エルピス』眞栄田郷敦が真相解明に挑む 冤罪が明らかにする暴力と支配の構図

 滝川が言う「真犯人を逮捕させまいとする力」というのが、警察や検察に影響力を持つ政治家、司法などの権力であるという構図はわかりやすい。三権分立とはいうものの、実際のところ行政の役割が大きく、内閣イコール与党であるため有力政治家に権力が集中する弊害は、これまでにも指摘されてきた。冤罪が生まれる陰では、闇に葬られる不都合な真実があり、表に出せない事情があることが示唆される。

 権力を動かす「中の人」に斬り込むだけでなく、『エルピス』ではさらにその内面に目を向ける点がユニークだ。権力の腐敗を追及する側は、必然的に自らの権力性と向き合わざるを得ず、真実を前にして自身の醜悪さや矛盾をやり過ごせなくなるのは、恵那や拓朗の姿から明らかだ。冤罪に関わる者は、自らを取り巻く暴力と支配の構図を自覚し、好むと好まざるとにかかわらず選択を迫られる。男女や親子の関係、スクールカースト、出世競争、社内のパワーバランス……駆け引きが繰り返される人間社会は、個人というミクロから国というマクロのレベルまで、果てしなく続く権力闘争にほかならず、情報を武器に影響力を行使するマスコミも例外ではない。恵那と斎藤の復活愛や拓朗が母・陸子(筒井真理子)の元を離れたことも、すべて支配・被支配の関係性の変化として説明可能である。その端緒になったのが、権力の交点にある冤罪事件の再捜査だったことは偶然ではない。

■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv

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