『霊媒探偵・城塚翡翠』の全5回完結は妥当? “原作未読”のライターが最終話を真剣考察

 また翡翠が策士で、孤独でネガティブな言動や体が弱いところを見せ、自分を信じてくれるのは香月しかいないと頼り、どんどん信頼と好意を抱くように仕向ける。そして、翡翠のお手伝い係・千和崎(小芝風花)が「翡翠を助けて」と念を押すハニートラップ。時々翡翠が仕掛けることもあり、2人で殺人のシミュレーションをするのに翡翠は「もうちょっと迫真演技でお願いします。殺人鬼なんですよ? お得意なはずです」と言い、香月は「え?」と一瞬戸惑い、翡翠は「ミステリー作家ですから」と言葉を付け足すなど、これもカマをかけているとしか言わざるを得ない。

 もし本当に香月が犯人なら、透明の悪魔事件から翡翠を遠ざけようとしているのは霊視で犯人とバレたくないからだろう。初回冒頭で、翡翠が「予感がするのです。妨げようのない死が直ぐそこまでこの身に近づいているのを感じるのです」という一連の会話は、香月が「気づかれた」と思ってもおかしくなく、殺意を引き出すトラップだと感じる。第4話の鐘場と翡翠の隠れている香月に聞かせるようなわざとらしい会話のやりとりや、アイコンタクトもそうだ。

 こうした流れなどから、予告編の「登場人物全てが嘘つき」という意味は、全ては香月をハメるための罠だったということなら納得できる。天子に関しては何も知らないため、計画の邪魔をしないように蛯名が止めていたのではないか。

 ただ、そうだとしても香月の姉の存在や、犯行理由、そして犯行の仕方が変わった理由が分からない。鐘場が疑われた娘の死への逆恨みの犯行は、実は香月の犯行理由なのかも知れないし、単純に黒髪が好きなシリアルキラーか。また8人目から消毒液を使ったりやり方が変わっているのは、香月が翡翠と出会ってから。魂の匂いを感じる翡翠に少しでもバレないようにしたのか、単純に実験なのか。「殺人に罪の意識を持たない人間は見つけ出すことができない」という翡翠の設定は、香月がその犯行に罪の意識がないという暗喩なのだろうか。もし翡翠が気弱な霊媒師を演じているということになれば清原果耶の演技の見せどころであり、瀬戸康史のダークサイドの演技バトルにも注目が集まる。

 ところで、真犯人以上に第5話が最終話という一番のミステリーについてだが、元々原作は短いため予定通りの長さだと考える。ただドラマ自体は続きそうなので、第6話以降は真相編か解決編か、事件の裏の動きを一から描くのかも知れない。この放送枠は『あなたの番です』(日本テレビ系)など2クールで前半と後半に分かれる作品が多々あるので、そうした構成上の仕掛けがあっても不思議ではない。

■放送情報
『霊媒探偵・城塚翡翠』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:清原果耶、瀬戸康史、小芝風花、及川光博、田中道子
原作:相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社文庫)
脚本:佐藤友治
脚本協力:相沢沙呼
音楽:Justin Frieden
チーフプロデューサー:田中宏史、石尾純
統轄プロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:古林茉莉、柳内久仁子(AX-ON)
協力プロデューサー:藤村直人
演出:菅原伸太郎、南雲聖一ほか
制作協力:AX-ON
©︎日本テレビ

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