『鎌倉殿の13人』和田義盛と上総広常の死の違いとは? 面白さが加速する物語を読み解く

 和田義盛の悲劇は、彼が見込んだ「賢いし度胸もあるし、なによりここ(胸に手をやって)が温かい」理想の鎌倉殿・実朝をいよいよ目覚めさせたようだ。そしてそれはどうにも、義時にとって、都合が悪そうである。

 政子(小池栄子)と義時が最初に頼家(金子大地)に授けた「鎌倉殿に代々受け継がれるべきもの」であり「上に立つ者の証」である「ニセモノ」の髑髏は、時が経つにつれ、「鎌倉殿はお飾りにすぎず、てっぺんに立つのはあくまで北条」という元来からの義時並びに北条家の野望をも感じさせるようになってきた。比企と北条の間で苦しんだ頼家にとってのそれは、自分の知らない「北条と鎌倉殿との絆によって始まった物語」が不随した「ままならぬ玉」であると同時に「大きすぎる鎌倉殿の威光」を象徴するものだった。

 一方の実朝は、それを敬いつつ、親しみを込めて掲げ持ち、胸に抱く。もしかしたら彼は、本来それが持っていた意味を本能的に理解しているのではないだろうか。本来の意味、つまりそれは、「これには、平家と戦って死んでいった人たちの無念が詰まっている」ということ。第3回において、政子が言った言葉である。優れた歌人でもあり、感性が誰より豊かな彼は、その髑髏に、平家と戦った人々のみならず、義盛ら、これまでの多くの戦いで死んでいった人々の魂をも見出し、彼らに対して、「安寧の世を作る」ことを誓ったのではないか。

 そして泰時(坂口健太郎)もまた、第40回において「私は誰とも敵を作らず、皆で安寧の世を築いてみせる」と父・義時にぶつけた。理想に燃える彼ら新しい世代が共に作る、「新しい鎌倉」をできることなら見てみたいと思わずにはいられないが、とはいえ歴史は変えられない。今はただ、彼らの「夢のゆくえ」を、そして、完全なヒール役と化した主人公・義時の心をうっかり見失ってしまわないように、固唾を呑んで見守るしかない。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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