『舞いあがれ!』『カムカムエヴリバディ』『あさが来た』 朝ドラを“自転車”から考える

 では、日本における自転車と女性の歴史ってどうなっているのだろうと気になり、検索すると(図書館に行け)、自転車文化センターのホームページに興味深い記事があった。あさのように、女性が自転車に乗り始めたのは明治時代で間違いないようだ。当時は今のように庶民の乗り物ではなく高級品でステータスシンボルとされていた。ここで注目したいのは、明治33年に誕生した女性の自転車倶楽部「女子嗜輪会」にオペラ歌手の三浦環が参加していることである。三浦環といえば『エール』(2020年度前期)で双浦環(柴咲コウ)のモチーフになった人物である。『エール』では環が自転車に乗るエピソードはなかったが、主人公の妻・音(二階堂ふみ)に大きな影響を与える環の背景に、当時珍しい自転車に乗って世間から注目されていたことが潜んでいるかと思うと興味深い。

 大正、昭和とじょじょに自転車が一般に浸透し、配達業務に欠かせないものとなっていく。そうして『カムカムエヴリバディ』の安子も配達に使用するわけである。日本で初めて自転車に乗った女性や、明治時代、日本女子大学に設けられた自転車部の話を描いた朝ドラがあってもいいのではないかと思うが、ちょっと地味なのだろうか。そこで登場したのが日本ではじめてパイロットになった女性のオリジナルストーリーの連続テレビ小説17作目『雲のじゅうたん』(1976年)だったのかなと想像する。

 気になるのは、自転車も戦時中は訓練に活用されたということ。飛行機にしろ自転車にしろ、人類に便利な発明は、状況によって様々な使い方をされる。誕生したとき、それを誰よりも先駆けて使用したとき、晴れがましい感情をもたらしたものが、ときには暗澹とした気持ちを生み出すのである。それでも人間は進化を止めることはない。

 自転車も進化してロードバイクになり、舞はそれを乗りこなす。朝ドラでロードバイクは珍しい。現代劇らしい小道具だ。それでいて、前述のごとく、朝ドラとは切っても切れないアイテムなのだ。舞が走る長い道はまるで朝ドラの歴史のようにも見えてくる。

参照

https://cycle-info.bpaj.or.jp/

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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