『舞いあがれ!』なにわバードマン編はまるで『鳥人間コンテスト』のドキュメンタリー

『舞いあがれ!』と『鳥人間コンテスト』

 『鳥人間コンテスト』は、言わずもがな小説や映画ではない。だが、あの大会を観ていると「ドラマ」を感じるのはなぜだろう。それは、パイロットやマシン製作スタッフらの“熱き想い”が画面を通して伝わってくるからではないだろうか。

 特に小型カメラが設置された操縦席にはドラマが詰まっている。必死の形相で人力飛行機を操縦し、時には心の中にある想いを、時には感情をぶつけながら前へと進んでいく……。体力の限界が尽きるまで、いや、尽きてからも、マシンを前に進めようとするパイロットもいるくらいだ。操縦席は、決して一人ではない。目には見えない仲間の魂がそこにはあって、1センチでも長く羽ばたこうと一緒に力を振り絞る。そんな、パイロットとチームスタッフの想いに、視聴者は心が揺さぶられるのだーー。

 いま「スワン号」はターニングポイントを迎えている。ケガをした由良冬子(吉谷彩子)に代わって、舞が完璧なパイロットになろうと努力している真っ最中である。

 『鳥人間コンテスト』に挑む人力飛行機チームだって、舞たちのようなトラブルを乗り越えながら本番当日を迎えたことだろう。喜怒哀楽をむき出しにしながら、チーム一丸となって大会に挑んだことだろう。

 我々は『鳥人間コンテスト』出場者が本番当日までに乗り越えてきた試練を知らない。ただ、人力飛行機が空を飛ぶ瞬間だけは、語らずとも見える気がする。必死に操縦するパイロット、声を枯らして応援するチームスタッフを見ると、どれだけの努力をしてきたかを、わずかでも感じられる気がするのだ。

 『舞いあがれ!』では、人力飛行機に命を燃やす作り手側たちの物語を丁寧に描いていると思う。舞たちを観ていると、ドキュメンタリーの要素を感じるのは、そんな「ドキュメンタリー」と「ドラマ」の二面性を持つ『鳥人間コンテスト』もとい「人力飛行機を作る人々」という“人間ドラマ”を題材にしているからなのかもしれない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

 

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