『君の花になる』本田翼が自分の存在意義を見つめ直す 考えさせられた“自分の色”や“夢”

 弱っているときに“ここに居ていいんだ”と甘えられる居場所か。それとも成長の機会を奪う依存先か。火曜ドラマ『君の花になる』(TBS系)第3話では、あす花(本田翼)が自分の存在意義を見つめ直すことになる。そこから「自分の色」について考えさせられることにも……。

 無名の新人グループだったCHAYNEY(チェイニー)をスターへと育て上げた実績のある、敏腕マネージャーの香坂(内田有紀)が8LOOM(ブルーム)のチーフマネージャーに就任。「私があなたたちをCHAYNEYにして差し上げます」と宣言し、様々な戦略を打ち出す。長い間くすぶっていた8LOOMにとっては願ってもないチャンスだ。

 着ぐるみの頭が外れてしまった弾(高橋文哉)のハプニング映像がネットで話題になっているタイミングで、メンバー全員で着ぐるみダンス動画をアップして知名度向上を狙おうという香坂。すると、瞬く間に5万回再生を突破。SNSのフォロワー数も生配信の視聴者数も格段に増えていった。やはり、香坂のマネジメントスキルは確かだ。彼女はいつだって正直に、そして信念を持って仕事に向き合ってきた。だからこそCHAYNEYも一躍スターへと上り詰めることができたのだ。だが、メンバーから「鉄眼鏡」とニックネームを付けられてしまう部分もあった。

 いきなりの着ぐるみ押しで「変な色がつかないか」と心配する8LOOMメンバーに「色も何もあなたたちはまだ無色透明」とバッサリ。色は後からいくらでも付けられる。まずは知ってもらわなければ、そのスタートにさえ立てないと、香坂の言っていることは最もだ。しかし、その言い回しは“今の彼らには何もない”とも聞こえなくもない。ただ、セオリー通りに動いていけばいいのだと押し付けられているようにも感じられる。

 また、スターに大切なのは自立した精神による内面からの輝きだと考えている香坂は、まだ子供っぽさの残る8LOOMメンバーの甘えた生活ぶりも一気に変えていこうとする。「CHAYNEYにはできた」という成功体験もあり、その信念は揺るがずに加速していく一方。ひいては彼らを日々笑顔で出迎え、生活面でフルサポートしている寮母のあす花の存在そのものを「依存している」「寮母は不要」とまで言い切るのだった。

 たしかに香坂の視点から見れば、あす花は甘やかしすぎに見えただろう。だが、半年後に契約終了を言い渡され、事務所に居場所を感じられなかったメンバーの視点からすれば、一番近くで「これからトップになれる」と本気で願い、何でもお願いを聞いてくれるあす花の存在は「ここに居ていい」と感じさせてくれるホームそのものだ。

 彼らの個性に向き合ってきたあす花は8LOOMは決して「無色透明」なんかではないと反論する。「一番怖いのは周りにいろんなことを押し付けられて。そのうち自分の色を忘れちゃうことだ」とも。何事にもいい面とそうではない面がある。だからこそ、一つの視点だけで決めつけてほしくない。誰かと比較されて失望されるのは想像以上にしんどいことで、大事なのは自分自身が自分の色を忘れないことだ。それは、脚本家・吉田恵梨香のポリシーとも言える考えのように感じた。

 吉田が今年1月に脚本を手掛け、恋愛至上主義の世界に疑問を投げかけた『恋せぬふたり』(NHK総合)と、“胸キュン”イベント満載な本作は、一見すると真逆のベクトルを持ったドラマに見える。だが、どちらの作品にも共通しているのは、周りの決めつけや押しつけに振り回されなくていいのだという思いだ。誰かの決めた「普通」や「当たり前」の型にはまらなくても、あなたはあなたであることがまず素晴らしいのだ、と。

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