川原和久こそ真の相棒? 『相棒』“イタミン”こと伊丹刑事が作中屈指の人気を誇るワケ
やはり印象的だったのが、薫との別れ。廊下を歩く薫に「おい! 元特命係の亀山~。ケツまくるとはお前らしいぜ。てめえなんかジャングルの奥で死んじまえ」と呼び止め、声を抑えて「とっとと行けよ、バカやろう」と言って背中を向け、手を振り去っていく。最後まで2人らしく罵声を浴びせ合う、素直ではない関係性を象徴する感慨深いシーンだ。伊丹の魅力を水谷は「ちょっといいところがチラっと見えるところがいい」とインタビューで語っていた。(※2)自尊心が高く不器用だけど、実は人情深く、薫への友情に熱いツンデレなところがかわいらしい。『ドラゴンボール』のベジータのような存在だからこそ人気が高いのだろう。
あれから14年。season21の初回で「元特命係の亀山~」とファン待望のお馴染みの掛け声で再会した。「黙ってねえでなんとか言えよ! このサルウィン亀!」と煽るも薫はそれどころではなく、「悪いな、今そういう気分じゃねえんだ」と大人の対応をされ、張り合いのなさに少し寂しそうな伊丹だったが、第2話で伊丹たちに協力をお願いしようとする薫に「お願いする時は土下座一択!」と命令。薫が土下座しようとすると「てめえ! 何しやがんだよこら、プライドってもんがねぇのかこのクソ亀!」と止め、結局薫に協力。
また、最後に薫を呼び出した伊丹は「警視庁に戻りたくねぇか」と、復帰を手助けする条件として「俺様の股をくぐれ!」と命令し、薫が屈むと「おーい! てめえ何しやがんだよ、プライドってもんがねぇのか。でも真剣なことが分かった」と言い、「親切だなんて思うなよ。俺がそうする理由はただ一つ。警視庁に戻ったお前をいびり倒して、引きごもり亀にすることだ!」と捨てゼリフを吐いて去り、次のシーンでは薫が特命係に復帰。伊丹が警察庁長官の甲斐峯秋(石坂浩二)に頼み込む、まさに“土下座一択”の回想シーンが挟まれる。
寺脇の復帰が発表されてから、警察を辞めた人間がどんな形で警察に復帰するのかが注目ポイントだったが、今回薫に対する嫌味な言葉が全てフリとなって、伊丹が薫のためにプライドを捨てて土下座をしたという漢気に、相棒ファンからも号泣の声がネット上に溢れ、誰もが納得できる、笑いと涙と感動が一気に押し寄せる復帰劇となった。
そして次回の予告で、殺人容疑のかかった薫の為に右京と伊丹が一緒に走っている姿が流れ、久々の右京とのタッグで薫を助けるという胸熱展開。第3話でも薫への友情と愛情が見られそうだ。
薫がサルウィンに旅立ってからは、代わりに右京の足りない部分を補うだけでなく、右京の歴代相棒たちの魅力を引き出してきた伊丹。22年間『相棒』を支えてきた真の相棒は実は伊丹なのかもしれない。
参照
※1. https://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20121030-1039785.html
※2. https://www.sanspo.com/article/20210314-FEX433IKYBPLZIJA5IVZXP2MYU/3/
■放送情報
『相棒 season21』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00~21:54放送
出演:水谷豊、寺脇康文、森口瑤子、鈴木砂羽、川原和久、山中崇史、篠原ゆき子、山西惇、田中隆三、神保悟志、小野了、片桐竜次、杉本哲太、仲間由紀恵、石坂浩二ほか
エグゼクティブプロデューサー:桑田潔
チーフプロデューサー:佐藤凉一
プロデューサー:高野渉、西平敦郎、土田真通
脚本:輿水泰弘ほか
監督:橋本一ほか
音楽:池頼広
制作:テレビ朝日、東映
©テレビ朝日・東映
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