川原和久こそ真の相棒? 『相棒』“イタミン”こと伊丹刑事が作中屈指の人気を誇るワケ

 10月26日の放送の『相棒 season21』(テレビ朝日系)は、14年ぶりに復帰した亀山薫(寺脇康文)の同期で犬猿の仲である伊丹(川原和久)が、殺人容疑のかかった薫のために杉下右京(水谷豊)と即席タッグを組む、伊丹メイン回とも言える内容だ。前回の放送では薫の特命係復帰のために陰で土下座する最強のツンデレぶりを見せ、放送後にトレンド入りするなど相変わらずの人気ぶり。そこで『相棒』シリーズ屈指の人気キャラである伊丹のこれまでの活躍ぶりを振り返ってみたい。

 伊丹は、警視庁刑事部捜査一課7係の巡査部長。単発の2時間ドラマだったpre seasonから登場する数少ないレギュラー陣の一人だ。事あるごとに捜査に首を突っ込んでくる特命係を疎ましく思い、顔を合わせるたび悪態をつくのが定番。伊丹と薫は捜査一課同期のライバルで、「特命係の亀山~!」と小馬鹿にして、憎まれ口を叩き合う犬猿の仲(仲良し)だ。実際に寺脇と川原は同学年で現在60歳。ちなみに、川原和久と妻の松本紀保との結婚披露宴の立会人は水谷夫妻が務めた。(※1)

 伊丹が特命係に嫌悪感を持つ理由は、捜査一課を出し抜き手柄を上げられるためだが、捜査一課時代に共に捜査していた頃、薫に腰を踏まれ腰痛持ちになった因縁も。ただ、事件によっては協力するなど決して不仲とは言い切れず、薫より冷静な組織人だが、実直な正義感を持ち、不器用で熱血漢という似た者同士で、要は同族嫌悪。今や腐れ縁の戦友と言える。

 開始当初は、伊丹、三浦(大谷亮介)、芹沢(山中崇史)の3人で「トリオ・ザ・捜一」と呼ばれ、コメディリリーフ的な存在だったが、そのツンデレぶりに早い段階から“イタミン”の愛称でファンから親しまれ、スピンオフ作品の主役だけでなく、2013年には『「相棒 捜査一課 伊丹憲一」 オフィシャルフォトブック』(ぴあMOOK)が発売されたほど人気キャラクターになった。

 怖い顔と気難しい性格から未だ独身で、season1「人間消失」で真犯人の英会話教師に恋する話や、season2「蜘蛛女の恋」ではお見合いパーティー、season11「オフレコ」ではCAとの合コンなど、恋愛沙汰で事件に巻き込まれること数知れず。また、特命係と一緒に捜査をする主役回もいくつかあり、season11「ビリー」では、右京と結婚詐欺事件の被害者たちへの聞き込みの際に、相手への配慮に欠けた対応で逆に被害者を傷つけたり、「あなたは彼氏に騙されていた」とストレートに言って気絶させてしまうなど、何が悪いか自覚をしていない右京&伊丹に、芹沢から「女心わからないブラザーズが何やってんすか!」と言われたユニット名が話題になった。

 season8「狙われた刑事」は伊丹が命を狙われる回で、10年前の大学サークルでの殺人事件の取調が原因で大学を中退したことが犯人の動機だと推測した伊丹は「今の俺が何をしてやれるかわからない」と落ち込む様子を見せた。結局は八つ当たりだったのだが、それでも「守ってやれなくてすまなかった」と頭を下げる姿は、漢気と実直な姿勢が感動を呼んだ。

 また、season10「ピエロ」では、後輩の芹沢が撃たれことで伊丹が捜査から外され、廊下で落ち込んでいるところに、右京から「まさか、ここで除夜の鐘を聞くつもりじゃありませんよね?」と誘いを受け正気を取り戻し、右京とタッグを組む姿が視聴者の感情を揺さぶった。

 そして、season14「伊丹刑事の失職」は、伊丹が自殺として処理した女性の転落死が、「実は殺人だった」と告白した犯人の手記が新聞にスクープされる話で、自宅謹慎になるも自分にとって最後の事件だと腹をくくり、謹慎処分を無視して特命係と捜査を続行し解決。最後は右京行きつけの小料理屋「こてまり」で待ち伏せし、「特命係の余計なおせっかいも、たまには役立つってことで」と右京らが注文する前に席を立ち、「2人のお代もこれで。お釣りは結構」と言って去っていく、不器用ながらも伊丹なりの最大限の言葉で感謝する姿が実に微笑ましかった。

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