『アトムの童』山﨑賢人×松下洸平が散らす演技の火花 これまでにない空気感の日曜劇場に

 第2話から本格登場した隼人役の松下は、本心を胸の奥に沈め、あえてヒールを装うクールさとわずかに漏れ出る悲壮感のバランスを完璧にコントロールしていた。アトム玩具を訪れた隼人が去り際に海と言葉を交わす場面での、口の中で感情を嚙み殺すような苦味ばしった表情は、その後の展開を考えても絶妙だった。

 『アトムの童』はゲームを題材とするだけあって、ところどころでこれまでの日曜劇場と違う、まったりした緩い空気が流れている。ゲームは本質的に楽しむものであり、格式ばった仰々しさよりも、いかに賢くゴールに到達するかを重視する世代間の違いと考えられる。その点に関連して、ストツー(一世を風靡したアーケード格闘ゲーム『ストリートファイターⅡ』)を知らない世代に、どうやって本作の面白さを伝えるかという課題もある。作品中でも社長の繁雄(風間杜夫)や専務の各務(塚地武雅)はプログラミングではなくキャラクターデザインを任されていたが、日々進歩するゲームがリアルとフィクションの双方で世代間の分断を生みやすいことに留意する必要がある。

 隼人がSAGASとの契約を蹴ったという事実は、とりもなおさず弱小会社のアトム玩具がSAGASを全面的に敵に回すことを意味する。興津が言うように、実際にSAGASはアトム玩具を丸飲みできるだけの力があり、前途には試練が次々と襲い掛かると予想できる。ドラマという仮想現実に対して、ゲーム的発想を持つ那由他たちはどのように立ち向かっていくだろうか。

■放送情報
日曜劇場『アトムの童』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:山﨑賢人、松下洸平、岸井ゆきの、岡部大(ハナコ)、馬場徹、栁俊太郎、六角慎司、玄理、飯沼愛、戸田菜穂、皆川猿時、塚地武雅(ドランクドラゴン)、でんでん、風間杜夫、オダギリジョー
ナレーション:神田伯山
脚本:神森万里江
演出:岡本伸吾、山室大輔、大内舞子、多胡由章
プロデュース:中井芳彦、益田千愛
音楽:大間々昂
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/atomnoko_tbs/

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