『一橋桐子の犯罪日記』岩田剛典が体現する人生の苦味 “孤独”を埋めていく桐子の未来は?

 刑務所に入ることが目的であって、誰かを傷つけたいわけじゃない。それが彼女の良さではあるのだけれど、久遠からすれば「甘い」という。これまでムショあがりと噂されていた久遠だが、実際に彼には前科があった。元々は弁護士を目指していたが、地面師グループの詐欺に加担した罪で逮捕されたという久遠。桐子はそんな彼に小説のネタと嘘をつき、犯罪のアドバイスをさせてしまったことを詫びる。でも、久遠から返ってきたのは意外な言葉だった。

「俺は元々、人のためになりたくて弁護士になろうとしてた。それがいつの間にか、誰の役にも立たないどころか、人をだますようなクズみたいな人間になっちまった。だから、ちょっとしたことだが、あんたに必要とされてうれしかったんだ」

 諦念の笑みを浮かべながら、ままならない人生の苦味を噛み分ける岩田剛典の演技が切ない。その表情も語る言葉も第2話の寺田(宇崎竜童)と重なった。みんな誰かに必要とされることで救われることを望んでいる。桐子は結婚詐欺師にはなれなかったが、誰かの孤独を埋めるという点では一役買っていた。

 結局は福森もかつて恋人だったゆかりと元サヤに戻り、今回のムショ活も人助けで終わってしまった桐子。なんだかんだ知り合いが増えて孤独ではなくなってきたが、それだけでは生きていけないのが現実だ。

 引っ越したばかりのアパートの取り壊しが決まり、さてどうする!という時に現れたのが雪菜(長澤樹)。父親にプロのサーファーになる夢を反対され、家を飛び出してきた彼女と今度は誘拐の計画を立てる。しかし、桐子が捕まって会えなくなったら雪菜はどうするのだろう。彼女もまた、「サーフィンしてる雪菜ちゃんが好き」と手放しで応援してくれる桐子を必要とする一人なのだ。どうにか今のまま、桐子が娑婆でキラキラと輝いていけないものだろうか。

■放送情報
土曜ドラマ『一橋桐子の犯罪日記』
NHK総合にて、毎週土曜22:00~22:49放送(全5話)
出演:松坂慶子、岩田剛典、長澤樹、片桐はいり、宇崎竜童、木村多江、由紀さおり、草刈正雄ほか
原作:原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』
脚本:ふじきみつ彦
音楽:長谷川智樹
制作統括:高橋練(NHKエンタープライズ)、清水拓哉(NHK)
プロデューサー:宇佐川隆史(NHKエンタープライズ)
演出:笠浦友愛、黛りんたろう、加地源一郎
写真提供=NHK

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