宮野真守×花澤香菜が語る『銀河英雄伝説』の魅力 「のめりこんでしまうくらい面白い」
田中芳樹のスペースオペラ『銀河英雄伝説』(東京創元社)を原作に、Production I.Gが制作したアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』。そのフォースシーズンとなる「策謀」の第一章が、9月30日から3週間限定で上映される。
銀河帝国に生まれ、最高権力者の座を目指すラインハルト・フォン・ローエングラムと、自由惑星同盟の司令官として帝国軍に立ち向かうヤン・ウェンリーを軸に進むストーリーは、「策謀」で中立地域のフェザーン自治領が絡み、大きく動き出す。
要塞が対峙したサードシーズン「激突」のクライマックスを経て、物語はどこへ向かうのか。ラインハルトを演じる宮野真守と、ラインハルトに仕える主席秘書官・ヒルダ役の花澤香菜に聞いた。【インタビューの最後には、コメント動画&サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「ヒルダは自分の意見をしっかりと言える強い子」
――ラインハルトは「策謀」で銀河帝国の権力を一手に握る存在にぐっと近づいていきます。血気盛んだった頃から冷徹な権力者へと変わっていくラインハルトという難しい役を、宮野さんはどのように意識して演じているのでしょうか?
宮野真守(以下、宮野):どこに着眼点を置くかで見え方が変わってくると思うんです。皇帝という地位の手前まで来ているから、ラインハルトの演技も厳しくしていっているのかというと、僕はそうではないアプローチをしています。外側からは、厳しいことを言って周りを従えているように見えますが、彼は自分の半身でもあったキルヒアイスを失って、心に大きな陰りを持ったまま進んでいるんです。僕の主観かもしれませんが、それが彼にとって縛りのような、呪いのようなものとして重くのしかかっているように思います。
――キルヒアイスとの約束、アンネローゼを幸せにするという目的がずっと心に残っているのですね。
宮野:それが一番大事にしたいものなんですよね。自分が生きるためにはそれしかない、それを目指すにはどうすればいいんだというところに向かっているんです。そこから来るラインハルトの孤独感、孤高の部分が強さに見えているところがあると思うんです。ヒルダはそこに気づいてくれているんですが、どう声をかけたら良いのか分からないところがあって……。
花澤香菜(以下、花澤):だから、ヒルダを演じていると緊張感がありますね。キルヒアイスを亡くして、ラインハルトが孤独になっていくところをヒルダは目撃しています。それは、ちゃんと人間としてのラインハルトを見ていないと、できない役目なんだと意識しています。
宮野:ヒルダは本当に賢い子だなと思います。ラインハルトが直接ヒルダにキルヒアイスのことや、アンネローゼのことを打ち明けたことはないのに、そこをちゃんと理解してくれているんです。
花澤:あとは、ラインハルトへの思いやりとは別に、彼女は帝国がどうなるかということをしっかりと考えているんだと思います。そことのバランスもありますね。ラインハルトにこうなってほしくないというイメージが彼女の中には浮かんでいて、だからこそ、誘導するわけではないけれど、自分の意見をちゃんと伝えているのではないでしょうか。それをラインハルトもちゃんと聞いてくれています。
宮野:彼の癒やしになっていますね。
――そんなヒルダを演じる花澤さんを、宮野さんはどのようにご覧になっていますか?
宮野:完璧ですね!
花澤:うふふふ(笑)。
宮野:ヒルダが香菜さんと決まった時に、僕の中での安心感が非常に大きかったんです。ラインハルトにとって、キルヒアイスがいてアンネローゼがいるというのが絶対的な空間でした。それがなくなった時、ヒルダが側にいてくれる存在として印象的に映ります。その意味で香菜さんはやっぱりすごいです。数多くの作品をいっしょにやらせていただいているので、香菜さんのお芝居の素晴らしさは知っています。偉そうですが、僕らは親和性が高いなあなんて思っているくらいです(笑)。
花澤:宮野さんと共演すると、いつも私の演じるキャラクターが大変なことになるんですけどね(笑)。
宮野:「策謀」に出てくるヒルダとアンネローゼのシーンを第三者的な目線から見ると、ヒルダの視野の広さと賢さが分かるんです。本当にラインハルトのことをしっかり見ているということがアンネローゼに伝わるシーン、それによってアンネローゼが安心できるシーンです。アンネローゼはいろいろな策謀の中で生きてきた人です。その中で人を見る目を得たアンネローゼが心を許せる相手として、ヒルダの大きさが感じられて感動しました。
――花澤さんから見た宮野さんはいかがですか?
花澤:ラインハルトが宮野さんだと聞いて、宮野さんとなら大丈夫だと思いました。私は最初、『銀河英雄伝説』という作品に入るということにものすごく緊張していたんです。前のOVAシリーズがあって、そこに登場してくるヒルダはテキパキしていて、セリフの言い回しも淀みなく繋がっていく感じでした。その中で説得力を持たせているのを見ていたので、自分が演じるとどうなるのだろうと、すごくドキドキしていました。
――それが宮野さん相手で緩和されたということですね。
花澤:ラインハルトがいろいろな苦悩を抱えているシーンを録っているのを隣で見ていて、ヒルダと同じ気持ちになりました。彼に何をしてあげられるんだろうと思いました。
宮野:香菜さんと一緒の収録の時に、音響監督さんによく言われたことがあって。香菜さんと掛け合いをしていると、たまにふっと和やかな雰囲気になってしまうんです。すると、「ラインハルトとヒルダはまだそうじゃないから」と怒られました。強い態度で接していけと。
花澤:ヒルダの視点では(フォースシーズン時点だと)“ラインハルト様”という高尚なイメージなので、心の距離の詰め方が難しいです。だんだんと2人の距離は近くなっていくんですが、行き過ぎてはいけないと。
宮野:ヒルダについて演出サイドから求められたのは、可憐ではなくて『銀河英雄伝説』の男社会の中で自分の意見をしっかりと言える強い子だということでしたね。その意味で、ヒルダの強さにはちゃんと根が張っていて、素晴らしいなと思いました。