山中崇、“朝と夜”に欠かせない俳優に 『ちむどんどん』と『鎌倉殿の13人』で別人の顔

 朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)も最終回まで残り9話。さまざま意見がある作品ではあるが、本作のキャラクターの中で視聴者からもっとも熱い支持を得ていたといえる人物が、山中崇演じる田良島だ。

 暢子(黒島結菜)の夫・和彦(宮沢氷魚)が勤めていた新聞社の上司である田良島は、若者たちを導く存在として、ときに視聴者の声の代弁者として、『ちむどんどん』の中で大きな役割を果たした。

 ある意味常識知らずであり、未熟ものでもあった暢子と和彦を、いばり怒鳴り散らすでもなく、ただ単に優しいだけでもなく、いつも自分の中から出てくる言葉で真摯に接していた。その姿はまさに“理想の上司”。何かと賛否がある本作のキャラクターの中でも、田良島が嫌い、という視聴者はほぼいなかったのではないだろうか。

『ちむどんどん』写真提供=NHK

 そんな田良島のハイライトと言えるのが、和彦が東洋新聞社辞める際のワンシーン。自らの非で退職することになった和彦は、田良島に迷惑をかけたくない思いもあり、「僕は東洋新聞社とも、田良島さんとも関係ないですから」と口走る。

 そんな和彦に対して、田良島はデスクを勢いよく叩き、唇と声を震わせ「二度と言うな」と絞り出し男泣きをするのだ。このワンシーンには田良島というキャラクターの確かな人間性、撮影を通して気づかれていたであろう田良島を演じる山中と和彦役の宮沢の絆も強く表れていたように思う。ただのいい上司ではない、ときに毒をも放つ田良島の魅力的な人間性は、間違いなく山中だからこそ出せたものだろう。

 そんな“いい人”だった山中だが、“夜のドラマ”『鎌倉殿の13人』(NHK総合)では、田良島とは完全なる別人となっている。山中が演じる人物は、平賀朝雅。北条時政(坂東彌十郎)とりく(宮沢りえ)の娘・きく(八木莉可子)の娘婿だ。

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