『デパプリ』が描く“ごはん”で繋がる多様な価値観 シリーズの魅力を総まとめ

キュアフィナーレの登場で、さらに輝きを増した『デパプリ』

 そんなゆいたちの仲間になった4人目のプリキュアであるキュアフィナーレに変身するのは、フルーツパーラーを営む家の子どもであり、ゆいたちが通う中学校の生徒会長である菓彩あまね。そして序盤のあまねは、敵に操られ、ブンドル団の一員・ジェントルーとして、何度もプリキュアたちの前に立ちはだかった存在でもあった。

 敵組織にいたキャラクターが改心したり、洗脳が解けるなどして追加戦士としてプリキュアになるのもシリーズの王道パターンのひとつと言えるが、振り返ってみるとこの展開は、2018年の『HUGっと!プリキュア』に登場したキュアアムール(ルールー・アムール)以来、4年ぶり。キュアアムールはキュアマシェリ(愛崎えみる)とふたりで一緒にプリキュアになったので、単独の追加戦士としては2015年の『Go!プリンセスプリキュア』に登場したキュアスカーレット(紅城トワ)以来、実に7年ぶりになる。

 プリキュアたちの想いを受けて過去から解き放たれ、自らの意志でプリキュアになるシチュエーションは、やはり最高に感情を揺さぶられる。

「デリシャスパーティ♡プリキュア」キュアフィナーレ へんしんシーン

 そうしてプリキュアとして共に戦っていくことになったあまねと、ゆい、ここね、らんたちの交流も、3人が約半年を掛けて成長してきたからこそ感慨深いものになっている。

 ここねがあまねとすぐ打ち解けられたのは、ゆいたちと過ごしている中で、友達に対して自分の気持ちを上手に伝えられるようになったからだろう。一方のあまねは、同じプリキュアとして、そして友達として培われてきた3人の関係の中に加わることで、少し生真面目なもともとの性質を解きほぐされ、より自分らしく振る舞えるようになっていく。

 丁寧ではあるが、ひとつひとつは些細なものに思えたドラマの積み重ねが、あまねの加入により、いっそう心に染みる物語を紡ぐことに繋がってきているのが現在の『デリシャスパーティ♡プリキュア』と言えるだろう。

 全体的には『プリキュア』シリーズとしてはオーソドックスな部分も多い本作。だが、ゆいたちのプリキュアとしての活躍を見守る大人が、ローズマリーというクィアな印象を受けるキャラクターであったり、シリーズで初めてレギュラーキャラクターとして登場するプリキュアたちと共闘関係にある男の子キャラクター・ブラックペッパーが存在したりと、ジェンダーの面での新しい試みも行われている。

 多様な価値観・境遇の人々が、誰も不自由することなく生きていくための方法が模索され始めている昨今。『プリキュア』シリーズもまた、子どもたちがより広く”自分とは異なる他者”を思いやる切っ掛けになるべく、登場人物たちの設定や描き方を変化させ続けている。

 その最新作に相応しいドラマを描き続けている『デリシャスパーティ♡プリキュア』が、この先何を見せてくれるのか? そして映画では何を描こうとしているのか? いずれも非常に楽しみだ。

■公開情報
『映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!』
9月23日(金)公開
声の出演:菱川花菜、清水理沙、井口裕香、茅野愛衣、高森奈津美、日岡なつみ、半場友恵、前野智昭、内田雄馬、花江夏樹ほか
映画主題歌:「ようこそ、お子さま♡ドリーミア」歌:後本萌葉、作詞:大森祥子、作曲・編曲:森いづみ
原作:東堂いづみ
監督:座古明史
脚本:田中仁
音楽:寺田志保
総作画監督・キャラクターデザイン:松浦仁美
作画監督:廣中美佳
美術監督:渡辺佳人
色彩設計:清田直美
撮影監督:高橋賢司
製作担当:星郁也
配給:東映
映画デリシャスパーティ プリキュア製作委員会:東映アニメーション、東映、ABCアニメーション、バンダイ、ADKエモーションズ、マーベラス
©2022 映画デリシャスパーティ プリキュア製作委員会
公式サイト:https://2022.precure-movie.com/
公式Twitter:@precure_movie

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