『ちむどんどん』暢子と矢作の信念が生んだ強い絆 成長と“らしさ”を演じ切った井之脇海

 矢作はフォンターナの権利書を盗んで売り飛ばした前科があり、本人も「疑って当たり前。別に謝ることはねえよ」と認めている。40万円の紛失は矢作のぬれぎぬだったが、もし暢子まで矢作を疑っていたら、矢作は店に戻らなかったかもしれない。矢作を引き留めたのは自分を信じてくれる人の存在と、過ちを繰り返すまいとする決意だった。

 なぜ残るのかとたずねる智に、矢作は「もう二度と恩を仇で返すような真似はしたくねえ。一度乗りかかった船、その船が沈まねえようにできることをやる。それがきっちりできなきゃ、自分の船は持てねえ」と答えた。ここで逃げたら、店を潰した失敗を繰り返すことになる。自身のためにも踏みとどまるべきと矢作は考えたのだ。ただ、それ以上に「絶対に辞めねえ。いつかあの店を必ず流行らせてみせる」と口にしたのは、暢子の気持ちがよほど嬉しかったのだろう。暢子は周囲の反対を押し切って矢作を雇い、疑いの目を向けられても矢作を信じた。暢子の言葉は、職人気質の矢作が意気に感じ、心に火をつけるのに十分だった。

 智が「無鉄砲で危なっかしいところもあるけど、自分より相手のことを考える人間です」と言うように、暢子にはまっすぐな一面があって、それが良い方向に出れば、矢作のように崩れない絆に変わる。矢作自身は一回り成長した姿を見せる一方で、「金を雑に扱う人間は経営者失格」、「出入り業者より立場は上」と憎まれ口を叩くなどクセの強さは相変わらず。それも矢作らしいと思えるのは、演じる井之脇海の役作りのたまものだろう。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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