『プリズム』7年の時を経て明らかになった悠磨の思い 相手に自分を開示することの必要性

 それでも、理解してもらうことを諦めなかった陸の思いは一つ実を結ぶ。7年前に突然姿を消した悠磨が朔治にあてた手紙が陸の手に渡ったのだ。そこには陸が知り得なかった、当時の悠磨の本音が綴られていた。陸に普通の幸せを手に入れてほしいと願っていたのは朔治だけじゃない。悠磨もまた、自分と生きる道を選ぶことで陸が傷つくことを恐れていた。

 それほどまでに、悠磨が自分を愛してくれていたことに気づいた陸の思いは溢れて止まらない。「これからゆっくり付き合っていく」と決めた皐月を部屋に残し、悠磨のもとにひた走る陸。幸か不幸か。その光景は誰の目線に立つかで見方が変わってくる。

 これまでプリズムのように色んな人たちの思いが一点に集まり、互いの放つ色に影響し合う様を見せてくれた本作。誰もが相手を自分とは違う人間であることを理解し、尊重するという全体としては良い方向にむかっているのは確かだ。しかし、その結果として陸と悠磨の仲を隔てるものはなくなり、二人は再び惹かれ合っていく。皐月はこうなることをどこかで分かっていたから、陸との結婚に躊躇し、また顔合わせの場で陸の生き方をどこかで肯定する言葉を放ったのではないだろうか。公式サイトのイントロダクションには、「やがて、皐月は、ある選択をする」とある。どうかその選択が皐月にとって悲しいものだけで終わらないようにと願ってやまない。

■放送情報
ドラマ10『プリズム』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送<全9回>
出演:杉咲花、藤原季節、森山未來ほか
作:浅野妙子
音楽:谷口尚久
制作統括:小松昌代(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
写真提供=NHK

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