『ちむどんどん』ネックレスを自ら外した歌子 上白石萌歌の切ない笑み

 『ちむどんどん』(NHK総合)第103話、暢子(黒島結菜)を手伝うため、やんばるから歌子(上白石萌歌)がやってきた。智(前田公輝)や三郎(片岡鶴太郎)たちも集い、歌子の歓迎会が行われるのだが、そこで歌子はショックな会話を聞いてしまう。

 物語冒頭で智と小競り合いをしていた矢作(井之脇海)も、歌子の歓迎会にやってきた田良島(山中崇)も、智と歌子のやりとりを見て、彼らの想いを察した。だが、かつて智は暢子に想いを寄せており、そのことを知っている周囲の人間は少なくない。歌子は、あまゆの常連客の健男(与座よしあき)が「智は暢子ちゃんに振られたから妹の歌子ちゃんに乗り換えたわけ?」と話すのを聞いてしまう。歌子自身も、智が暢子を想っていたことは知っているが、「姉のお古、お下がりの智と……」という会話は彼女の心を傷つけるには十分だった。

 歌子を演じている上白石の笑顔の変化が魅力的だ。智と一緒に買い出しに出かける前は、その場を和ませる穏やかな笑顔を振りまいていた。だが、会話を聞いた後の歌子の笑顔は、口元こそ微笑んでいるけれども元気がなく、傷ついていることが窺える。

 暗い部屋で、智からプレゼントされたネックレスを外す歌子の姿は切なかった。そのネックレスは、歌子が小学生の頃に智からもらった手作りの金メダルによく似ている。手作りの金メダルを大切にしていた歌子が、智からもらったネックレスを自分の意思で外すという行為は、それほどまでに心が傷ついたという表れだ。

 翌日、歌子は暢子の口から「智」と聞くと、こわばった表情を見せた。歌子の気持ちなどつゆ知らず、「ちむどんどん」にやってきた智は歌子の前で暢子の話をする。この場面では、その後の歌子と智が口論になる場面以上に、歌子の生々しい感情が伝わってきた。「そこがまた暢子のいいところ」「暢子はやっていけますよ」と智が言う度に、歌子の表情が硬くなる。智の心はまだ暢子に向いているのだと感じたのかもしれない。食事をする手が徐々に止まっていき、智を見る歌子の眼差しには暢子への嫉妬心や智への苛立ちのようなものも感じられる。

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