『赤いナースコール』に感じる2種類の恐怖 チャイコフスキー連続殺人の目的は人体の完成?

 恐怖には2種類ある。ショッキングな場面を目撃した時の恐怖と、じわじわと生理的な不安をあおるような恐怖だ。よくできたホラー映画は両方の要素を備えていると言われる。これは『赤いナースコール』(テレビ東京系)にもあてはまる。

 『赤いナースコール』第6話ラストで潜入捜査中の加藤(堀口紗奈)が惨殺され、ショックを引きずったまま翌週を迎えた視聴者もいたことだろう。8月22日に放送された第7話では、復讐を誓う刑事の工藤(池田鉄洋)が関係者に聞き込みを行う。これまでに得られた情報を総合すると、病院内に殺人鬼が潜んでいる可能性が高い。看護師の野田(上地春奈)は巡回中の加藤と話したと明かし、アリサ(福本莉子)は廊下から男女の笑い声が聞こえたと証言する。さらに工藤は、加藤が壁に残した血痕を発見した。

 第7話では、榎木田(鹿賀丈史)の妻・玲子(渡辺真起子)が登場。先代院長の娘である玲子と榎木田の仲は冷めていたが、かろうじて誕生日を一緒に祝う程度の絆はあった。ここで新たにわかったのは、榎木田記念病院の経営状態だ。赤字続きであることは問題ではないと玲子は語る。石油取引で財をなした先代が社会貢献のため設立したのが榎木田記念病院で、グループ全体の収支に影響はないという。

 榎木田記念病院が入院患者を退院させない理由が経営難によるものではないことがはっきりしたわけだが、そうすると別の理由があることになる。翔太朗(佐藤勝利)、津田(山本浩司)、後藤田(森田甘路)の313号室の患者にアリサを加えた4人の情報交換では、死んだ三上(藤夏子)が知っていた「事情」が話題になった。榎木田の密命を受けた西垣(浅田美代子)は、榎木田に「例の件」について「見当がついている」と話す。一方で、主治医の石原(板尾創路)と看護師の山根(ベッキー)も別途、秘密を探っていた。

 登場人物それぞれが視聴者と同じように謎解きに参画するのが『赤いナースコール』であり、榎木田記念病院は、現実とフィクションが入り混じった仮想空間のようだ。チャイコフスキーを聞いていた野田は第7話ラストで転落死したが、榎木田の意を受けて、トラックの運転手に三上を轢き殺すよう指示していた。生前の加藤と最後に会話したのが野田で、電動ノコギリ男に翔太朗とアリサが襲われた時、放送室でチャイコフスキーのCDをかけたのも野田だったのではと考えられる。殺人犯に近い場所にいると思われる野田は、何者かの手で消されてしまった。三上や加藤もそうだが、決定的な事実を知ってしまった者、核心に近づいた人間は排除される運命にあるようだ。

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