ヴァンパイアハント=HIPHOP? 暑い夏に観たい最高にゴキゲンな映画『デイ・シフト』

 かつて、DMXが唸りながらバギーをかっとばし「X Gon’ Give It to Ya」を流す一方で、ジェット・リーがカンフーするような映画シリーズがあった。それらはHIPHOPカンフー3部作と呼ばれているわけだから、本作もHIPHOPヴァンパイア映画と呼称するべきだ。なにせジェイミー・フォックスはショットガンでヴァンパイアを吹っ飛ばすし、スヌープ・ドッグはミニガンをブッ放したりすごい蹴りを放ったり、挙句の果てに「ウエストサイド・フォー・ライフ!」と宣言しながらヴァンパイアを吹っ飛ばす。そもそもスヌープ・ドッグのキャラクターは誰もがリスペクトする上級ヴァンパイアハンターで主人公を手厚くサポートしてくれる義理堅いやつなのだが、それは現実のスヌープと大して変わらない。スヌープは史上最高のラッパーの一人だし、若手を手厚くサポートし「アンクル(おじさん)」として親しまれていることで有名だ。おまけに登場シーンからいきなり「首を切って小切手を得る(cutting necks and cashing checks)」と韻を踏んでいるわけだから、完全にビッグ・ジョンという名前のヴァンパイアをハントしているスヌープ・ドッグでしかない。違いはヴァンパイア・ハントをして金を得ているかラップをして金を得ているかというだけだが、己の才能とスキルを信じて危険を顧みず金を得る(サバイブする)という点で、ヴァンパイアハントとHIPHOPは全く同じである。そう、ヴァンパイア・ハントとはHIPHOPなのだ。

 というわけでHIPHOPヴァンパイア映画たる本作は、最高にゴキゲンな映画である。無論ちゃんと意識を傾けて観賞すれば監督の秘めたるメッセージ(ヴァンパイアハントはHIPHOPということ)を見出すことができるが、そんなことはどうでもいい。結局はジェイミー・フォックスがショットガンでヴァンパイアを吹っ飛ばし、スヌープ・ドッグがすごい蹴りをしてミニガンをブッ放すということが大切なのだ。そういうわけで『デイ・シフト』を観て、うんざりするほど暑い今日をくだらなくて最高の一日にしよう。

■配信情報
『デイ・シフト』
Netflixにて配信中

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