視聴者が求める“朝ドラ受け“とは何なのか SNSの発展とともに変化した約10年間の歩み

 筆者としては朝ドラ受け自体が減少しているとは思ってはいない。そもそも国会中継により放送時間が短縮される場合はほぼ朝ドラ受けはなく、ほかにも地震により臨時ニュースが冒頭に入る予期せぬケースもある。番組の構成上、VTRからスタートすることも往々にしてあり、「ニーニーのことは置いといて……」とテロップが入っていたのは、むしろ朝ドラ受けを楽しみにしてくれているファンに向けた、せめてもの心遣いと捉えるべきであろう。ただ、SNSでの声が、まるで国民全体の意見かのように扱われるSNS全盛の時代において、少なくとも『あさイチ』が始まった2010年当時よりかは遥かに朝ドラ受けがしにくくなったのは否めない事実であろう(もちろん、こうして朝ドラ受けを記事化するメディアにも責任はある)。そこに拍車をかけているのが、『ちむどんどん』という“わじわじする”展開が続く朝ドラそのものだ。

 臨時ニュースや国会中継による放送時間短縮から、なかなか朝ドラ受けができずにいた5月末。博多大吉はNHKを離れ、曜日パートナーを務める『たまむすび』(TBSラジオ)から朝ドラ受けを行ったことがあった。ストーリーの進展とともに徐々に辛辣なコメントへと変貌を遂げている『ちむどんどん』の朝ドラ受け。この日は『あさイチ』に比べ、大いにコメント尺があるということで、なかなか触れることができなかったであろう、ヒロイン・暢子に対する思いを語り始めた。そこで話していたのが、黒島結菜が演じるヒロインに期待していたがお世辞にも万人から好かれる人物ではないということだ。そんな暢子のヒロイン像は現在もさほど変わりはなく、このまま9月末の最終回まで突き進んでいくことになるのであろう。

 かつて井ノ原が祖母に向けて始めた朝ドラ受けは、この10年余りで取り巻く環境も一人ひとりの価値観も大きく変化し、いつの間にか視聴者やネットの反応を意識した朝ドラ受けへと変化している。視聴者が求める朝ドラ受けの形とは一体なんなのだろうか。(視聴者の)不満の捌け口として存在している今の朝ドラ受けではなく、何の気負いもない純粋な愛に満ちた朝ドラ受けを楽しみにする朝がまた来てほしい。

※1 https://www.news-postseven.com/archives/20220723_1775960.html?DETAIL
※2 https://www.oricon.co.jp/news/2072866/full/

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