『パンドラの果実』S2で問われる小比類巻の行動 人類最大のタブー、クローン人間の闇

 Huluで独占配信中のディーン・フジオカ主演『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2が、第2章に突入した。「クローン人間」という人類最大のタブー、超えてしまった一線に、科学犯罪対策室はどう向き合うのか。

 Season2は、1つのエピソードを3話で構成。事件の黒幕は、ライデングループという大企業と、背後にちらつく国家権力だ。第4話が放送された現時点で、彼らの真の狙いは明らかになっていない。

 Season1同様に、本作はギリギリのリアリティを持って、有識者さえその気になれば、明日にはあり得るかもしれない世界を描いている。だからこそ我がことのように考え、自らの死生観や倫理観を振り返る機会にもなる。第1章では、過去に罪を犯した少年少女にワクチン接種と偽ってゲノム編集を行い、凶暴性を取り払う「パクス計画」が題材となった。しかし、用いられる簡易なゲノム編集はハイリスク・ハイリターン。まさに科学の光と闇、その両側面を持っていた。

 さらに描かれるのは、被害者遺族の感情。まるで別人のように大人しく善良になった加害者の現在は、心からの反省によるものか、あるいは外的な力(ゲノム編集)によるものか――遺族が疑心暗鬼になるのは当然だ。「何でもするから許してください」と頭を下げる加害者に、被害者の父が放った言葉があまりに痛切だった。

 「サイエンス」のからくりは、小比類巻(ディーン・フジオカ)や最上(岸井ゆきの)が紐解くまで分からないが、事件の「ミステリー」は、あえて視聴者が早い段階で違和感を覚えるよう、工夫されているようにも思う。だからこそ展開に焦燥感が生まれ、疎外感がない。

 Season2では、格闘技を得意とする新人・奥田(吉本実憂)が科学犯罪対策室に着任。SF好きな彼女は、劇中で対峙する現象、たとえばゲノム編集やクローン人間の創造について「SFではおなじみ」と口にするのだが、これにより「劇中では現実に起こっている」「それがいかに異常なことであるか」がさりげなく強調され、世界線が整理される。

 深い事情をまだ何も知らない奥田の存在は、アンタッチャブルになっていたこと――小比類巻が妻・亜美(本仮屋ユイカ)の遺体を冷凍保存している件にも、改めて新鮮な感情を与えてくれた。Season2の第1章では、その事実を当たり前のように含めた「小比類巻祐一」という男が存在していた。Season1から観ている視聴者も、いつの間にか亜美の存在や、彼女の蘇生を願う小比類巻に慣れを覚えていたかもしれない。冷凍された亜美に話しかける彼の姿も、小比類巻家にとっては何気ない日常のひとコマであり、小比類巻にとって亜美は、宝物やお守りのような存在になっているかのようにも思えた。

 しかし奥田は今回、自身が好きだったSF作品について「寂しさを埋めるためだけに妻の命を操作した」ことは、ロマンではなくエゴだと考え至り、「最低だ」と口にする。最上や長谷部(ユースケ・サンタマリア)が小比類巻の心中を慮るなか、彼はクローン生成と死者の蘇生は異なるものだと冷静に奥田の混同を正す。そして「本人でなければ意味がない」と、静かな瞳で語った。小比類巻は、亜美のクローンがほしいのではなく、あの亜美に再び会いたいのだという強い思いが改めて伝わったシーンだった。

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