『ちむどんどん』仲間由紀恵が流した涙の意味 終わらない戦争と“幸せになる”というテーマ
第2話で優子が縁側ですすり泣く場面があったが、優子の涙にはこんなにも悲しい理由があった。賢三が優子の肩に手を添える姿は、若き日に初めて優子が賢三に家族の話をした場面と重なる。本作が家族の物語である理由も明らかになった。優子の心から、生まれ育った家族の記憶が消えることはない。その記憶を背負って賢三と築いてきた家庭、暢子(黒島結菜)たち四兄妹が優子にとっての家族であり、善一(山路和弘)が極めつけの良い人であっても、その点は揺るがない。優子が賢秀(竜星涼)を盲目的に甘やかしてしまうのも、秀夫の面影を賢秀に見ていたからと考えると腑に落ちる。沖縄出身の仲間が紡ぎ出す言葉は、深い悲しみをたたえて聞く人全ての心に沁みとおるような浸透力があり、圧巻の演技だった。
「家族の分まで幸せになってくれ」という賢三の思いは、暢子たちに対する優子の「幸せになることを諦めないでちょうだい」という願いと響き合っていた。優子の告白を聞いた後では、「幸せになってほしい」という言葉も一段と違って聞こえる。亡き家族のことを思い出し、後悔や絶望にさいなまれながら、優子は幸せになろうと決めて歩んできた。荒削りで順風満帆からほど遠い暢子たちも、優子の思いを受け止めてそれぞれの幸福へと歩き出すだろう。ウークイの夜は忘れられない一夜となった。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK