『ちむどんどん』恋を知ってしまった暢子 黒島結菜の“変化”と変わらないもの

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』は、“恋愛編”真っ只中だ。和彦(宮沢氷魚)を想う暢子(黒島結菜)の恋が、とうとう動きだしている。

 これまで、彼女を取り巻く家族や料理、職場での人間関係、下宿先「あまゆ」を訪れる人々との交流は描かれてきたものの、暢子が誰かを見てキュンとしたり、好きな人がいてモジモジする……といった恋模様は皆無。彼女の感情の中にある愛は、料理や家族に向けられていた。

 そもそも、暢子は恋愛に対して“超”がつくほどの鈍感である。彼女に想いを寄せる智(前田公輝)と食事へ行ったときも、デートだとは気づかず、自身が働く西洋料理店「アッラ・フォンターナ」を食事場所に選ぶ始末。ふいに、友人の早苗(高田夏帆)から「智ニーニー、子どものころからずーっと暢子が好きだったのに」と言われたことを思い出して、ようやく“これはデートなのだ”と気づく有り様だ。

 プロポーズはうやむやになったが、その後も、暴走気味な智に戸惑いつつ、うまく彼の想いを避けていく。智の気持ちを受け止めきれないと思ったのか、今の関係を崩したくないのか、ただ単に恥ずかしいのか……とにかく恋仲になるのを回避した。

 これ以上、暢子の恋話はないのかと思った矢先、事態は急変する。第60話で「フォンターナ」のオーナー・大城房子(原田美枝子)と酒を飲む機会があった暢子は、ベロベロに酔っ払ってからみ酒。「うちは恋愛も結婚もしない。料理が恋人です」「そもそもみんなどうやって恋愛したり、結婚したりするんですか。うちにはさっぱり分からん」と言いつつも、頭の片隅には和彦がいた。

 それを見抜いた房子が「つまりあなたは生まれて初めて恋をしたっていうこと?」「胸がドキドキして、気がつくとボーッと誰かのことを考えちゃう」と指摘。反射的に暢子は「恋人がいるんだのに、好きとか言えないじゃないですか」とこぼしてハッとする。つまりその衝動こそが、恋愛感情なのだと気づいたのだ。

 それからというものの、和彦を思って仕事が手につかない。料理をしても、ホールに出ても失敗だらけ。それもこれも恋のせい。生きてきて遭遇したことのない感情に、体が押し潰されていく。

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