『呪術廻戦』に『SPY×FAMILY』も ジャンプ作品の2.5次元舞台化が止まらない理由

 現在のジャンプ作品の舞台が成功しているのは、このとき『テニミュ』が先陣を切って学んだことをしっかり生かしているからだろう。実際、先日の『呪術廻戦』のキャスト発表時も、ネガティブな意見より「豪華」などを含め、ポジティブな意見がSNS上では目立った。特に、そのときに印象的だったのは、“推し”が出ているから観に行こう、という声だ。

舞台「呪術廻戦」公演PV

 2003年の「テニミュ」成功後、約10年の月日を経て『週刊少年ジャンプ』が原作の2.5次元舞台がコンスタントに上演されてきたことで、2→2.5次元の変換へのハードルが下がってきただけでなく、舞台俳優の認知にも貢献したはずだ。当時はキャスティングに難航していたものが、今や「2.5次元俳優」として多くの人に受け入れられ、愛される人気の存在になっていることを考えてほしい。どうしても、二次元のキャラクターと俳優の乖離などは起きてしまうはず。それでも、自分の推しを一生懸命演じたり、しっかりした解釈で大事にしたりする俳優本人を応援したくなる気持ちの方がファン意識の中で高まってきたように感じるのだ。また、5月に公演があった舞台『「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 平和の象徴』はU-NEXTでチケット販売をしていたり、初演を各ストリーミングサービスでレンタル鑑賞することができる。舞台『呪術廻戦』もU-NEXTにて独占ライブ配信予定だ。こういった舞台の配信という動きも、2.5次元舞台そのものや俳優をより一般的に知らしめ、受け入れられやすくしているのかもしれない。

「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 平和の象徴 公演ダイジェスト映像

 舞台化されやすい作品ジャンルとしてはやはり「テニミュ」以降も『ハイキュー!!』(2015年〜)や『黒子のバスケ』(2016年〜)などのスポーツ漫画が続くのが印象的だ。他には『デスノート THE MUSICAL 』(2015年〜)や『バクマン。』(2021年〜)といった、登場人物が比較的演じやすい容姿の作品も公演されている。しかし、2018年開始の「『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE」や2019年開始の『「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage』をきっかけに、作品そのものにファンタジー設定があったり、キャラクター造形だったり実写化の難易度が高そうな作品が積極的に舞台化されるようになった。ここにも、20年近くの歴史とともに蓄積されてきたノウハウが生かされるようになった背景を感じる。

 各俳優陣の演技はもちろん、舞台『呪術廻戦』に関してはやはり作品に欠かせない呪霊をどのように舞台で表現・演出するのかに注目したいし、舞台『SPY×FAMILY』はアクションシークエンスが舞台と親和性が高そうなため、期待したいところだ。

参照

※ https://www.cinra.net/article/interview-201806-nogamisyoko

■公演情報
舞台『呪術廻戦』
【東京公演】
2022年7月15日(金)~ 7月31日(日)天王洲 銀河劇場にて
【大阪公演】
2022年8月4日(木)~ 8月14日(日)メルパルクホール大阪にて
出演:佐藤流司、泰江和明、豊原江理佳、高月彩良、定本楓馬、寺山武志、和田雅成、田中穂先、石井美絵子、太田基裕、福澤希空(WATWING)、藤田玲、山岸門人、南誉士広、五十嵐拓人、三浦涼介
原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
脚本:喜安浩平
演出:小林顕作

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