閲覧注意の大量の血と臓物 絶対に感染したくないゾンビウイルス『哭悲/THE SADNESS』

 ちなみに本作はなにもグロいだけの映画ではない。序盤の人物造形と関係性をさりげなく示唆する手腕は繊細そのものだし、考えぬかれたような凶悪な展開は見ものだ。創意工夫に満ちた拷問シーンは本当にどうにかしている。また、あらゆるシーンでロブ・ジャバズの映像センスが光る。秩序が崩壊してしまった台北市を高所から俯瞰するショットは壮観だ。これで長編デビュー作だというのだから、ロブ・ジャバズの才能は本物だ。しかし、本作を安易におすすめすることはできない。これを観て元気になることはまずないし、感染者は性欲も歯止めがきかなくなるので厳しい性暴力描写もある。苦手な人は本当に注意が必要だ。

 というわけで本作はとんでもない作品だ。全編に渡って繰り広げられる冒涜的恐怖は非常に素晴らしいし(つまり本当にキツいということ)、やっぱり血と臓物が大量に流れる映像を映画館で観る体験は見逃せない。とはいえ、観た後はものすごくぐったりするし、道行く人に対する警戒心が異様に高くなってしまうので安易におすすめすることはできない。それでも観る覚悟ができた人はーーその後の予定を全て台無しにして薄暗い部屋の中でぐったりする準備をしておこう。もちろん、鍵をかけるのを忘れずに。

■公開情報
『哭悲/THE SADNESS』
新宿武蔵野館ほかにて公開中
監督・脚本・編集:ロブ・ジャバズ
撮影:バイ・ジエリー
音楽:TZECHAR
出演:レジーナ・レイ、ベラント・チュウ、ジョニー・ワン、アップル・チェン、ラン・ウエイホア
配給:クロックワークス
2021年/台湾/カラー/2:1/5.1ch/100分/中国語/日本語字幕/神部明世/原題:The Sadness/R18+
(c)2021 Machi Xcelsior Studios Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト:https://klockworx-v.com/sadness/
公式Twitter:@thesadnessjp

関連記事