『やんごとなき一族』涙と笑顔入り混じる感動のラストに 土屋太鳳と松下洸平の素晴らしさ

 衝撃続きの展開に、息つく間もなくグランドフィナーレを迎えた『やんごとなき一族』(フジテレビ系)の最終回。長きに渡り繁栄し続けた深山家は、新たな価値観を得ることでさらに一歩前へと踏み出すことに。佐都(土屋太鳳)と健太(松下洸平)は晴れて結婚式を挙げ、涙と笑顔が入り混じる感動のラストとなった。

 一度は実家に戻った佐都であったが、追いかけるように健太が迎えにくる。記憶はまだ戻っていないものの、佐都を失ってはいけないと感じていることを打ち明けるのだった。だが、佐都と健太が3人家族としてやり直していくと決めた矢先、明人(尾上松也)が画策していた「深山家を潰す」作戦のせいで会社は大きな損失を背負ってしまう。さらにその損失から深山グループを救うためドバイからきた大富豪のサイード(竹財輝之助)に隠し事をしようとしたことで、圭一(石橋凌)は信頼を失ってしまった。すると佐都を助けようと集結した深山家の女性たちも、圭一に向かって口々に声を上げるのだった。ついに圭一は失脚し、健太が当主となる日がきた。一族は恐れていた変化を受け入れ、新たな人生を歩み始めるのであった。

 しきたりに囚われ、男女ともにそのルールに従うことで家を守ってきた深山家。心を殺し、人生を犠牲にし、「深山家の駒」のように過ごしてきた人々は、佐都と出会うことで変わり、自分の人生を生きる喜びを見つける。特に過剰に抑圧されてきた女性たちは、団結して声を上げることで深山家に決定的な変化をもたらした。佐都と健太が起こした革命は、女性たちの力で成功へと導かれたのだ。先頭で戦い続けた佐都の熱い魂に、思わずこぶしを強く握ってしまう。

 本作は、女性たちの活躍ばかりに焦点が当てられたわけではない。積み重ねてきたものを変えることで、圭一が味わう喪失感も真摯に描かれる。変化に伴うポジティブな側面だけでなく、心に広がる不安や悲しみも映し出されていた。しかし最後には、しきたりから解放されたことで、“真”の心のつながりで結ばれた各夫婦の姿も。これまで応援してきた登場人物たちが自分を解放し、「深山家」としてではなく、個人と個人が惹かれ合う姿に目頭が熱くなる。

 そして何と言っても最終回は、これまで以上に役者の素晴らしさが光る回でもあった。明るく快活に、どんな時もめげることなく立ち向かい続けた佐都を、真っ直ぐな瞳と力強い芝居で駆け抜けた土屋太鳳。そしてそんな佐都にたっぷりの愛情を注ぎ、深山家に対しても誠実さを貫く健太を演じた松下洸平。松本劇場として『やんごとなき一族』を誰よりも盛り上げた松本若菜に、佐都と健太に寄り添い続けた久美を演じた木村多江……。誰が主人公になってもおかしくない存在感を放つ深山家の面々は、このキャストだったからこそ、ここまで突き抜けた一族でいられたのだろう。現実とは思えないスケールの世界でクレイジーな行動をとるキャラクターばかりだが、狂おしいほど愛しい。ラストで松下洸平が声だけで“健太”になったのだと分かったシーンは、松下の芝居によって最終回の空気が大きく変わった瞬間だった。ここで私たちはこのシンデレラストーリーがハッピーエンドだと確信する。まさに、私たちが愛してきた佐都と健太が本当の意味で結ばれた瞬間だった。

 変化することは苦しい。人は簡単には変われない。しかし行動を続ければ、小さな革命もいずれ大きく世界を変えることになる。私たちは自分たちの人生を諦めてはいけないと思わせる作品であった。

■放送情報
木曜劇場『やんごとなき一族』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:土屋太鳳、松下洸平、尾上松也、松本若菜、渡邊圭祐、松本妃代、馬場ふみか、佐々木希、石野真子、倍賞美津子、木村多江、石橋凌ほか
原作:こやまゆかり『やんごとなき一族』(講談社『Kiss』連載)
脚本:神森万里江、青塚美穂
演出:田中亮、三橋利行、水戸祐介
音楽:木村秀彬
主題歌:milet「Walkin’ In My Lane」(SME Records)
挿入歌:wacci「恋だろ」(Sony Music Labels)
プロデュース:宋ハナ
制作プロデュース:古郡真也
協力プロデュース:三竿玲子
制作協力:FILM
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/yangoto
公式Twitter:@yangoto_fuji
公式Instagram:@yangoto_fuji

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