『やんごとなき一族』圭一と美保子の熾烈な攻防　松本若菜がラストに向けての重要人物に？

　泉（佐々木希）の強烈な執着から解放されたかと思いきや、佐都（土屋太鳳）と健太（松下洸平）には、まだ大きな問題が残っていた。『やんごとなき一族』（フジテレビ系）の第9話では、深山家での女性の立場、そして出産することの意味が描かれる。しかしそれは決して明るく前向きな話ではなかった。

　圭一（石橋凌）の妹・春菜（キムラ緑子）が深山家を訪れた。独身で自由気ままに暮らす春菜は、ヤマト（内藤秀一郎）というアイドルに夢中。生け花という特技がありながら、深山家に生まれた女性であることから仕事もさせてもらえず、ヤマトを応援することにしか生きる意味を見出せずにいた。しかしある日、春菜がヤマトに貢ぐために骨董品の花瓶を売ってしまったことで事態は急展開を迎える。

　春菜の存在、そして佐都と有沙（馬場ふみか）の暮らしぶりからも、深山家の女性が結婚や出産を通してどんな扱いを受けてきたのかがうかがえる。当主・圭一の人を人とも思わないような口振りに加え、妊娠するやいなや「男の子かどうか」にしか関心を持たない周囲の反応。どれも女性にとっては心が痛むようなトピックだ。しかし深山家ではこの考えが、血筋を繋ぐために重要なことだと解釈され、誰も疑問に立ち向かおうとしない。だが女性たちの表情を見ている限りでは、その言葉に潜む暴力性を誰もが感じていただろう。そこでなんとか状況を変えようと奮闘しているのが佐都と健太なのだ。第9話では、実際に春菜が実績を評価され、個展を開けることになる。久美（木村多江）もこれまで以上にいきいきとした表情を見せるようになり、深山家の在り方はゆっくりではあるが確実に変化しているだろう。佐都と健太の娘が生まれてくることが、この革命にとってのさらなる一歩となることに期待したい。

　さらに第9話でもインパクトを残したのが美保子（松本若菜）だ。これまでも数々の名言を繰り出し、強烈な印象を焼き付ける松本若菜の芝居は“松本劇場”と呼ばれ、本作の名物と言っても過言ではない。加えて第9話では美保子のバックグラウンドが語られたが、そこにはテーマソングまで。これまでやんわりとしか伝えられてこなかった美保子の生い立ちが本人の口から聞けたことで、ますますキャラクターの奥深さは増し、ここからクライマックスに向けてキーパーソンになりそうな気配も見せた。そんな美保子は、「深山家」の現状を受け入れない佐都と健太とは対照的に、「深山家」にしがみつく。どんなしきたりがあろうと、どんな歪んだ価値観が蔓延っていようと、美保子にとっての“深山家の嫁”とは、自分が努力と根性で掴み取った大切な宝なのだ。かつて悔やみ、苦しんだ自分の家庭環境を捨て、自らの力で人生を切り拓いた証でもあるこの肩書きは、今の美保子にとって一番失いたくないもの。妊娠したと嘘をついても、明人（尾上松也）が激しくイメチェンして離婚届を突きつけようとも、美保子は泣き寝入りするような女ではない。

　圭一と美保子の熾烈な攻防、そして佐都の破水で幕を閉じた第9話は、この物語がいよいよ一つの結末に向かっていくのだという熱い勢いを感じさせる。尊く高貴であることを意味する「やんごとなき」とは真逆をゆく『やんごとなき一族』が、いったいどんな答えを出すのかをしっかりと見届けたい。

■放送情報
木曜劇場『やんごとなき一族』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00～22:54放送
出演：土屋太鳳、松下洸平、尾上松也、松本若菜、渡邊圭祐、松本妃代、馬場ふみか、佐々木希、石野真子、倍賞美津子、木村多江、石橋凌ほか
原作：こやまゆかり『やんごとなき一族』（講談社『Kiss』連載）
脚本：神森万里江、青塚美穂
演出：田中亮、三橋利行、水戸祐介
音楽：木村秀彬
主題歌：milet「Walkin’ In My Lane」（SME Records）
挿入歌：wacci「恋だろ」（Sony Music Labels）
プロデュース：宋ハナ
制作プロデュース：古郡真也
協力プロデュース：三竿玲子
制作協力：FILM
制作・著作：フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト：https://www.fujitv.co.jp/yangoto
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