『ちむどんどん』田良島の金言が身に沁みる 暢子と歌子の関係はどうなってしまうのか
この言葉に重なるのが、検査結果の出た歌子(上白石萌歌)である。初めての東京、検査のために上京してきて不安もいっぱいなはずなのに、久々に会った姉は自分に気を遣ってくれるどころか、自分のことばかり。智(前田公輝)との楽しそうな会話にも入れてもらえないことから、疎外感を感じてしまったのだろう。検査の結果が出るまで、部屋から出ずに塞ぎ込んでいた。そしてついに出た検査結果も、「原因不明」という回答。膠原病でも結核でもなく、他の疑わしい病気は全て調べたが、熱が出る原因は今の医学ではわからないとのことだ。そう考えれば、やはり心因性によるもの、つまりストレスが原因なのかもしれない。そう考えた方が、思い当たる節は山ほどあるからだ。暢子も、歌子のために良かれと思って言うこと、やることが全て裏目に出てしまっていて、ここに少し兄・賢秀(竜星涼)の面影を感じてしまう。
幼いころはもしかしたら、純粋に体が弱くて熱を出しがちだったかもしれない。しかし、それが歌子の「当たり前」になってしまったことで、周りから常に病弱扱いされたり、“そのせいで”何もできない自分というのに慣れてしまったりと、自然と自己肯定感が下がっていく仕組みが作られてしまった。それでも歌子なりに色々なことに挑戦していたわけだが、ついにここで歌子の他責思考が強まってきてしまったように感じる。恋愛も、仕事も、結婚も、自分ができないのは全て病気のせい。そう思うようになってしまったら、“本当に”そうなってしまう。家族、特に好きに生きて周りからもチヤホヤされる暢子への煮え切らない思いを抱えながら、どんどん「なんでうちだけ」というマイナスな感情で前に進むことはさらなるストレスを生み、熱の原因になってしまいそうだ。
そんな歌子にこそ、田良島の言葉が今最も必要なのではないだろうか。
※高嶋政伸の「高」はハシゴダカが正式表記。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK