終盤に向けてギアを入れ直した『金田一少年の事件簿』 道枝駿佑が解決する次なる事件は?

 ノンフィクション作家の橘五柳(勝矢)の新作原稿をめぐる暗号解読ゲームに参加した一(道枝駿佑)は、橘殺しの容疑者として追われることとなり、逃亡しながら暗号の解読に挑む。しかし伝言ゲームのように繋げられていく参加者たちは皆、一がコンタクトを取った直後に“見えざる敵”によって殺されていき、そのたび一に新たな罪が着させられていく。そして桂木(ゆきぽよ)に託されていた伝言をもとに野中(宮澤エマ)を訪ねた一は、「私で終わり」という言葉からある重要なことに気付くのである。

 6月12日に放送された『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)第7話は、「金田一少年の殺人 解決編」。前回も触れた通り、これは26年前の“初代”の際に一度ドラマ化されたエピソードのリメイクであり、1話完結だった当時よりも原作の要素を織り交ぜながら2話完結でしっかりと見せる。26年前には普通に使われていた“ポケベル”が存在しない現代で、一体どのように「くうほうをうて」を剣持(沢村一樹)に伝えるのか気になっていたが、まさかオレンジジュースを使った炙り文字とは……。近くにいた子供にメモを託して直渡ししていた点は効率的だが、なかなか危ない橋を渡ったものだ。

 それに加えて今回のエピソードでは、原作にも“初代”にも準拠しない“5代目”独自の要素がいくつか見受けられた。たとえば倉庫で目を覚ました一の前に佐木(岩崎大昇)が現れるくだり。一に渡していたタブレットにGPSアプリを入れておき、それで居場所を特定したというのである。たしかに謎を解く手助けになる佐木の動画がビデオカメラではなくタブレットで撮影するものになっている“5代目”。前回のエピソードでその受け渡しが行われたとあれば、これが最も自然な流れといえよう。他の誰かが偶然発見するという無理をねじ込むまでもなく、同時に一に従順に仕える佐木というキャラクターのポジションも鮮明にさせる。

 また犯人である都築(戸塚祥太)の動機が、娘のためではなく婚約者のためになっている点はキャスティング上の年齢を考慮したものだろうか(“初代”の際に都築の娘・瑞穂を後に“2代目・七瀬美雪”となる鈴木杏が演じていただけに、今回のキャスティングにも期待していたのだが)。原作の都築は52歳で、“初代”では当時40代半ばの山下真司が演じており、今回はそれよりもさらに10歳若返る。この都築の年齢が、ドアを使った少々アクロバティックなトリックに真実味を与える上ではプラス材料として働いたことは間違いない。一方で違和が生じかねない“老眼鏡”のくだりは橘の持ち物を拝借したということで辻褄が合わせられる。もっとも動画に記録された目元の違和感から犯人に気付くあたりは「聖恋島殺人事件」と重なるのだが、それは原作も同じなので特に問題ないだろう。

 ここにきて思うのは、「学園七不思議殺人事件」で“新たな金田一”の始まりを告げ、“特攻の島”という要素を描いた「聖恋島殺人事件」、酒蔵という特殊な舞台に日本の古典ミステリーのオマージュを感じさせた「白蛇蔵殺人事件」、肝試しに端を発する「トイレの花子さん殺人事件」と、“5代目”の特色である和のテイストが全面的に続いた流れでの「金田一少年の殺人」。これは連続ドラマの構成として、終盤に向けてギアを入れ直す意味合いが込められているようにも感じる。次回は和の真骨頂である「首狩り武者殺人事件」(原作では「飛騨からくり屋敷殺人事件」)で、その次がおそらく今回のシリーズのトリを飾る事件となるのだろう。何が来るか予想するだけでも楽しくて仕方がない。

※岩崎大昇の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■放送情報
『金田一少年の事件簿』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:道枝駿佑(なにわ男子)、上白石萌歌、沢村一樹、岩崎大昇(美 少年/ジャニーズJr.)ほか
File05ゲスト:渡辺大、戸塚祥太、山西惇、宮澤エマ、今井隆文、勝矢、ゆきぽよ、高橋努、半海一晃
原作:天樹征丸、金成陽三郎
漫画:さとうふみや(講談社)
脚本:川邊優子、大石哲也
監督:木村ひさし、丸谷俊平
主題歌:なにわ男子「The Answer」(ジェイ・ストーム)
チーフプロデューサー:三上絵里子
プロデューサー:櫨山裕子、岩崎広樹、秋元孝之、大護彰子
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kindaichi2022/
公式Twitter:@kindaichi_5
公式Instagram:@kindaichi_5

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