安田顕は作品のムードを補強する 『未来への10カウント』にみるサポート力

 主人公の一番の理解者の役といえば、安田は映画『とんび』でも似たような役どころを全うしていた。同作は、不器用な父と息子の絆を描いたヒューマンドラマ。短気でケンカっ早い父・ヤス(阿部寛)の幼なじみである照雲というキャラクターを安田は演じていたのだ。

 こちらでも、主演の阿部より一歩引いた立ち位置で各シーンのムード作りに貢献。盛り上がるシーンには必ずと言っていいほど“安田顕=照雲”の存在があった印象が強くある。白眉だったのが、ヤスの息子・旭(北村匠海)が婚約者の由美(杏)を故郷に連れてきたシーンだ。実は由美は子持ちのシングルマザーであり、頭の古いヤスは彼女と旭の関係に対し、あからさまに否定的な態度を貫徹。重苦しい空気が漂い、しだいにシリアスなものへ。ここで安田演じる照雲の出番というわけだ。いつも旭の味方だったはずの優しい彼は、急に由美に排他的な姿勢を取る。ヤスさえもが「言い過ぎだろ……」と思ってしまうほどの言葉を彼女に浴びせ、不器用な頑固オヤジの本音を引き出そうというのだ。安田の演技のトーンがそれまでと変わるため、観客である私たちは照雲が一芝居打っているのだとすぐに気がつく。かといってそれは、いかにもな嘘くさいものでもない。場合によっては観ていて白けてしまうものだが、そうはならない。安田は絶妙なバランスで、“劇中劇”を、それも一人芝居でやってのけているのだ。そのパフォーマンスだけでも見せ物として成立するほどである。本作でも安田が一番のサポーターであった。

 安田顕という俳優は、登場するごとに作品の強度を上げる存在だと冒頭で述べた。『未来への10カウント』においては桐沢だけでなく、甲斐もまた若い生徒たちに影響を与えている存在だ。それと同じように、若い俳優たちが追いかける存在は、主演の木村拓哉だけではないのだろう。いろいろな未来を夢見てしまう。

■放送情報
『未来への10カウント』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村拓哉、満島ひかり、安田顕、高橋海人(King & Prince)、山田杏奈、村上虹郎、馬場徹、オラキオ、坂東龍汰、佐久本宝、吉柳咲良、櫻井海音、阿久津仁愛、大朏岳優、山口まゆ、三浦りょう太、富樫慧士、八嶋智人、市毛良枝、富田靖子、内田有紀、生瀬勝久、柄本明
脚本:福田靖
演出:河合勇人、星野和成
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
チーフプロデューサー:黒田徹也
プロデューサー:川島誠史、都築歩、菊池誠、岡美鶴
音楽:林ゆうき
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日

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