『ちむどんどん』暢子と賢秀に共通する悪癖 “間違いな態度”はどう改善されるのか

 『ちむどんどん』(NHK総合)には、たくさんの失敗というか、“間違い”が描かれている。主人公・暢子(黒島結菜)の反抗的な態度や物言いだったり、兄の賢秀(竜星涼)のどうしようもない詐欺行為だったり。興味深いのは、この二人の「人に何かをされた時」のリアクションの相違である。

 暢子はこのところ、出会う人にかなり恵まれている。上京してからは、彼女の世間知らずさが露呈し、それを周囲の大人が「それではいけない」と諭す。しかも、それだけではなく、学ばせてくれてもいるのだ。レストラン「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)は、最初こそ暢子に対してあたりが強かったが、それは無理もないだろう。元々飛び入りで入店試験に合格したとはいえ、一流のお店で雇う人材は最初からそこそこのことができていてほしい。ただでさえ忙しいのに、普通の新人に比べても教育コストがかかる暢子が煙たがられるのも仕方ないことだ。

 何より、彼女はそういった状況下でも自分の立ち位置をあまり理解せずに、オーナーに歯向かったり反抗的な態度をとったりしていた。それでも、シェフの二ツ橋(高嶋政伸)やオーナーは10連勤を達成した彼女の良いところに目を向け、何かを信じたからこそ足りないものを自ら補わせるために、東洋新聞社にバイトに行かせた。店に籍を一応おいたまま、知識を蓄えにいかせてもらえるなんて、羨ましい限りである。

 さらに、新聞社では田良島甚内(山中崇)という最高の上司に恵まれる暢子。世間知らずな彼女を馬鹿にしないで、はっきりとした物言いで色々教え、やらせてあげる。彼もまた房子に「人柄は100点満点」と伝えるなど、彼女のダメなところではなく良いところに目を向けていた。そんな彼のもとで働いたこともあって、暢子も一見関係なさそうなことでも、世の中のことは回り回って、必ず自分と繋がっていることを理解することができた。つまるところ、彼女は出会いに強いのだ。しかし、それでも二ツ橋のカルパッチョの味付けに納得しない態度を取るなど、やはり「自分が正しい」と反発する癖が直らない。

 では、一方で兄の賢秀(竜星涼)は暢子に比べて諭してくれた人がいなかったかと言うと、そういうわけでもない。元々ずっと三人の妹、特に長女の良子(川口春奈)にはいつもこっぴどく叱られていたし、大叔父の賢吉(石丸謙二郎)や歌子(上白石萌歌)の先生、下地響子(片桐はいり)にも諭されてきた。その度にバツが悪そうにはしていたものの、やはり彼はいつも自分が悪い時も「自分が正しい」と思って、頑なに謝ろうとしなかった。これは、暢子との共通点でもある。

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