『鬼が笑う』監督が“外国人労働者問題”を語る 「SNSでつぶやくだけでは全然意味がない」

 6月17日に全国公開される映画『鬼が笑う』の特別試写会が6月1日に東京・神楽座で行われ、主演の半田周平、監督の三野龍一がトークイベントを開催。ゲストとして、外国人労働者支援のNPO法人・Adovoの創設者で元代表の松岡柊吾も登壇した。

 兄の三野龍一が監督、弟の三野和比古が脚本を担当する兄弟映画制作チーム「Mino Bros.」による本作は、外国人技能実習生問題、差別や偏見といった日本社会が抱える諸問題を描く物語。主人公は、母と妹を暴力から守る為に父を殺めてしまった石川一馬。世間から「人殺し」と非難され、生きる希望を失った一馬が、中国人労働者との出会いによって再び幸せを掴もうと立ち上がる。

三野龍一監督

 本作で“外国人労働者問題”にスポットを当てた理由について、三野監督は「外国人労働者を描きたかったわけではないけれど、僕自身、いじめだったり、差別だったりの意味がわからなくて。偉いことを言っているわけではなく、そういう発想がもともとないというか。『なんで人と比較するんだろう』っていうところがベースにあった」と語り、「人を肩書きや立場で判断する人が多いことに腹が立つからこそ、(作品として)客観的に観てもらうことで、外国人労働者やいじめられている人を意識してもらいたかった」と映画化の意図を明かした。

 また三野監督は、弟の和比古が脚本執筆にあたり2週間ほど工場でアルバイトを経験したと報告。“日本人のボス”と“外国人の職員”のやりとりを観察することで、たとえば名前ではなく「この子」と呼ぶことへの違和感など、現場の生々しさを作品に落とし込んだという。

半田周平

 そんな脚本の印象について、主人公を演じた半田は「あってはならないし、あってほしくないけれど、現実社会の中であってもおかしくないだろうなという描き方がされている」と話し、自身も常日頃から日本人の外国人労働者に対する接し方には疑問を抱いていると吐露。さらに「外国人というのはあくまで人物の記号に過ぎず、同じ人間。それだけでいいんじゃないか」と思いを明かし、その考え方は役柄との共通点でもあると述べた。

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